<音楽が出ます、音量に注意>

 

 

 

 

一本桜と岩手山の静かで美しい風景を右に、小岩井から雫石を西に走る

風は想ったより冷たく、深まる秋に山のてっぺんから冬将軍が

大地を見ている様だ。

でも、十月も半ばになっても牧草だけは、どうして濃い緑のままなのだろう。

 

雫石の広大な田園地帯に向かって緩やかな下りが始まる辺り、右の林の中に「風光舎」がある。

初めて訪れてから、もう数年。

 

秋のつるべ落としの頃、店仕舞いのちょっと前に滑り込み、美味しい珈琲、お菓子を頂く。

そして、店の窓から「夕暮れ」を眺める。

 

 

<お気に入りの「キゥイのロールケーキ」>

 

ほぼ予定通りに着いた。

駐車場には県外ナンバーも目立つ。

まだ三十分ほどゆっくりできる。

 

 

 

風光舎の玄関に向かう路は、つい周囲を眺めながらゆっくりの足取りになる。

美味しい珈琲へ続く小路。

自然にゆっくりと歩いてしまうのは、オーナーの計らいなのか、と想ったり。

 

 

短いが円く迂回する様に歩く。

 

春には、山吹が咲く。

山吹色をかき分ける様に歩く。

それがいいし、夏は色々な花が林の風に揺れて涼しげなのだ。

窓の灯りが暖かく見える雪の白もいい。

小路には、いつも季節が満ち満ちている。

 

今日は、ススキを揺らす微かな風

 

 

季節を全身で感じて玄関に。

穂が身体を撫でてくる様に伸びている。

ススキの穂の優しい曲線が好きだ。

 

 

 

 

案の定、席はいっぱい。

待つ事が嫌いだが、ここでは苦にならない。

暮れていく風景を眺めて待つ。

微かな「風」と消えそうな「光」を感じながら、少し庭を歩いた。

 

陽が高ければ、小鳥の語りかける様なさえずり。

姿を見つけると微笑んでしまう。

 

庭を歩くと樹々の間から少しだけ岩手山が見える。

風光舎の窓はその光景の正面にある。

このロケーションをオーナー夫妻が気に入ったのだろう。

 

 

 

数分で空いた窓際の席。

 

ブラジルの中煎りがいい感じ。

今まで呑んだブラジルとちょっと違う。これは美味しい。

すぐさま、「豆を挽いて下さい」と言った。

 

カフェバッハで修業したマスター。

勝手に書くが、

無駄がない様で、イイ感じで遊び心もある様な風味。

これは、マスターの落ち着いた心が、見極める世界だ。

珈琲は、豆を選別し、煎り、淹れる。

そのマスターにの感性を味わう様なものかもしれない。

「とても美味しい」

 

 

カップとソーサーの蒼が、夕暮れ時、見事にはまった。

 

 

カップに樹々や雲が映る。

窓際の席で、いつもカップのスケッチを眺めて珈琲を味わう。

自分の神経が緩んでいく時間。

 

珈琲は深煎りのグァテマラ

 

 

 

シナモンの香りから始まって、カボチャの甘みが拡がる。

とても美味しい。

 

<カボチャのプリン>

 

いつも「窓辺に座りたい」想いがあり、今日もかなった。

 

<日替わりの一枚の絵>

 

閉店の時間

ブラジルを持って店を出た。

「千葉さんが来ると、いつも混むんです」

三人で笑った。

「ちょっと時間をおしてすいませんでした」

「いえいえ、とんでもございません」

二人の言葉は、ピタリと息が合った。

 

 

店の中の人影は消えて、二人

 

夫妻は、もともと航空関係だったらしい。

今は、ゆったりとして自分達の時の流れを「風と光」の中で楽しんでいる。

そうして珈琲は、季節ごと美味しくなっていくような気がする。

 

素敵な二人です。

 

 

だいぶ暮れてきた帰り道、

「温泉にでも寄って、行こうかな」

 

 

 

一緒の人が言った。

「まるで、影絵を見ているようね」

 

なるほど、やはり人は、それぞれ違う眼を持っている。

そう感じさせてくれる人だ。

 

 

「なるほど、影絵だ」