<音楽が出ます、音量に注意>
盛岡の街から国道455道を走る。
通称寺町通りを三ツ割に向かう。
山田線の踏切を過ぎれば、すぐ右に「横澤パン」の本店。
気をつけないと見落としてしまいそうにひっそり佇む小さな店構え。
横澤パンと言えば、川徳デパートや光原社からクルミクッキーを買い、
毎月の様に食べている。
県外から訪ねて来る人には、たいていクルミクッキーを盛岡の想い出として渡す。
しかし、肝心のパンを食べた記憶は、七月に、樹々に包まれたジブリの「きじやまカフェ」
「よつ葉バターのトースト」ぐらい。
想えば、まだ店に行ったことがない。
近頃、パンに興味が湧き、
昭和2年創業の盛岡で最も歴史のあるパン屋の「横澤パン」に行こうと考えた。
それから、盛岡にコンサートに来た「小田和正」さんは、大のパン好きで、
横澤パンに来たという。
パンを買い、踏切の辺りで食べていたという話だ。
そういえば、訪れた街を彼は、散策し、
コンサートで、小田さんはその街を歩いて撮った動画を流すと聞いた事がある。
その日は、パン作りをしたりするパン好きで、小田和正ファンの人を誘った。
<行った結果、次々と買い、写真に収めきれないパンの山・美味しそうな狐色>
小さな店の中に陳列されたパンの種類は少ないが、どれも美味しそうだった。
御主人は、三代目だそうだ。
沢山買ったが、
「食パンは、売り切れですか?」と聞いてみた。
「あの、あと30分ぐらいで焼き上がります」
後で来ることにして、食パンの分も代金を払い、一度、店を出た。
そして、丁度用事を済ましてコンビニに寄った。
コーヒーを二つ買って車に戻った。
味見しようと袋を開ければ、車の中に拡がる香り。
ひと口ずつ食べて見たが、食パンが待ち遠しい。
<バターロールを長く繋げた、その名も「連結ロール」 >
一列ごとに、ちぎりやすい。
ふわっとしているのに口の中で崩れにくく、噛んでいるうちに、
美味しさが拡がる。
レーズンパンを味見。
「ちょっと甘くて、う~ん甘酸っぱい初恋の味」と隣から聞こえて笑ってしまった。
中にはレーズンがたっぷり入っている。
噛むほどにパンの味が濃くなる様で、美味しい。
<レーズンパン >
ブラザーパン。
二種のパンの不思議な調和。これが美味しい。
優しいパンだ。
「そろそろ、行ってみません?」
そうこうしているうちに30分はとうに過ぎていた。
再び横澤パンを目指した。
待ちかねた食パンができ上がっていた。
「お待たせしました、熱いのでしばらく冷ましてください」
「はい」
「それから、湿気が出ますので、袋の口を開けておいてください」
「分かりました、ありがとうございます」
丁寧に説明してくれた。
自分のパンに想いを込めている。
家に帰って、早速、パンを広げた。
お薦めのピーナツバターも買ってきた。
いよいよ食べれる。
冷める前の僅かに温かい食パンを食べてみたかった。
パンは、こだわりの手捏ねだけあって、
口に入れると、
始めはふっくら感が広がるが、噛むほどに風味が増す。
パンの耳も香りよく、噛めば噛むほど美味しくなる。
これは、確かにトーストにすれば、とても美味しいだろう。
創業者の味と作り方を守り続けてきたのだろう。
しっかりとしたパンだ。
このところ食いしん爺的は、重めのパンが好きになり、
「おやつパン」ではなく、朝食にランチに「主食」としてのパンを探している。
これは食べすぎないようにしないと。
<森に埋まってジブリの世界の「きじやまカフェ」の横澤パンを使ったバタートースト>
お土産に使う「くるみクッキー」
昭和のはじめから約90年。
「食」関係の店が、代々長い歴史を刻むのは並大抵の事ではない。
雑誌作りなどで、色々な店と人を取材させてもらってきたが、歴史を刻む人達に共通するのは、
「作る人」は「創る人」で、大袈裟に言うと作り上げた物を「美味しい生き物」にしてしまう。
それだけの熱意と探求心に溢れている。
もう一つ、共通する事は、
食べる人が「美味しい」と言ってくれる事がいつも念頭にある。
いつか、ゆっくり手捏ねパンの物語やこだわる想いなどを聞いてみたい。
そして、三ツ割の踏切辺りで、食べてみようかな。