<音楽が出ます、音量に注意>
巷は三連休。
盛岡の若園町辺りで用事が済むと、もう2時15分を過ぎていた。
遅くなったランチ。
「そうだ、まだ開いてるかな?」
久し振りに「若園」へ。
「そば処・若園」は、中津川の東側の古い町並みが続く紺屋町のもう一つ東側。
近所には老舗の和菓子屋さんがあったりの落ち着いた雰囲気の街にある。
<極細でコシのある蕎麦はあの頃と同じ、美味しい!>
2時半近くに暖簾を潜ったが、テーブルが一つ開いていただけ。
食べ終えて出ていく客、すれ違う様に別の客が入ってくる。
厨房は、忙しい。
この暖簾を数年前までは、よく潜った。
近くで仕事をしていた頃、残業前にここで腹ごしらえ。
天丼や蕎麦を楽しんだ。
「今夜も残業ですか、大変ですね」と言われていた頃が蘇る。
始めは、何人かで来ていたが、しだいに一人の時に来るようになった。
打合せが続き、頭が飽和状態の時、「美味しいもの」に癒されて、
ちょっとだけ現実を忘れる時間だった。
天ざるが来た。
天婦羅は天つゆで食べる。サクサクと口の中から聞こえてくる。
「紅葉卸」
盛岡の蕎麦屋では、ワサビより紅葉卸の方が多いかもしれない。
大根おろしに唐辛子のピリ辛。
「権八」とも言う。
さて、久し振りの「若園」の蕎麦を頂く。
一度目の箸、ツルツルと喉ごしがいい。
二度目、コシもある。
三度目、蕎麦と絡んだ海苔との風味を味わう。
あ~ 美味しい。
「いつから、あったのだろう?」
記憶を辿る。
よく来ていた頃より、ずっと遡る。
初めて見てから、
ひょっとして30年ぐらい遡るかもしれない。
数年前に食べたイメージそのままだが、
食べるうちに、もっと美味しくなった気がしてくる。
天ざるを食べ終え、迷わず言った。
「ざる一枚、お願いします!」
そういえば、テレビの食レポは、みんな凄い。
半分ぐらいは、口に入れた途端、表情が変わり全身を使って表現する。
みんな美味しそうに食べている。
一人ランチで、全身で表現したら、周りの人は驚くだろう(笑)
自分にとって「美味しい」は、じわりと広がってくるものだ。
いやいや、これも固定観念なのかもしれない。
追加したざる蕎麦を食べながら想った。
いったいなにが美味しくなったのか?
生意気に上から目線で、勝手な事を言うと、
そばとタレと付け合わせとバランスが良くなったのではないか?
自信は無いが前より、もっと食べたくなり、追加した事だけが根拠 (笑)
更に美味しく、進化しているのだろう。
それに比べて、自分は、どうなんだろう?
あの頃、遅くまで仕事しながら、何を想っていたのか?
色々考え、仲間と語っていたささやかな未来。
自分は、今、その延長線上に立っているのだろうか?
回り道しながらも、見ていた方角に歩いているのだろうか?
蕎麦湯を飲みながら、そんな事を想っていた。
満足の時に振り返ると心の明暗はなく、平たい心で考えている。
「まあ、頑張ってはいるし、ボチボチかな?」 便利な言葉だ。
あ~美味かった。
満足の後、外に出た自分の背筋は、ピンと伸びていた。