<音楽がでます、音量に注意>
お昼も近いのにまだ瞼が緩んでいた
携帯が震える。
「ランチ? ご一緒しません?」
一呼吸おいた二つの「?」に 「はい! 行きましょう!」
ぼやけた頭はくっきり。
車で迎えに行きながら場所決め。
「失礼します」
助手席に乗せるなり、
「中華は?」
「いいですね~」
盛岡の大通りと菜園の通りの間にある「空」へ。
ちょっとの間で満席になった。
メニューを開いてチリソースを頼んだ。
海老に絡まるたっぷりのチリソース。
目の前にして滲み出る唾液アミラーゼ。
向かいは麻婆豆腐。
美味しそうだ。
これはひと口、味見したい!
まだぐつぐつの麻婆豆腐が小さなな鍋に。
レンゲを口にする前に言ってみた。
「どうです、先に食べあいしませんか?」
「いいですね!」
二つの味を楽しむ
ご飯の甘みと麻婆豆腐のこくを感じるピリ辛。
レンゲを持つ手の名残惜しさ。
もっと食べたい。
自分のチリソースは、始めピリッとくるが喉にふんわりとした甘さを感じて食欲全開。
「どっちも美味しいです!」
心からの微笑み。
一週間前のちょっとした考え方の縺れは、見後に消化された。
シェアしたシューマイ
せいろの中から湯気をなびかせ出てきたシューマイ。
具が透けている。
中華をさほど知りもしないのに「そうそう、これがシューマイ」なんて。
人の感性は違う。
でも「味」の好みが似ているとちょっと辛くても後でほんのり甘い関係。
仕事相手とは、かぶる感性と違う視点とのバランスが大切だと想っている。
まあ、現実はそう甘くないけれど。
仕上げにまろやかなコクのある杏仁豆腐を食べながら。
自身のレンゲでシェアできる関係になるまでの必要条件は?
そんなことを想っていた。
高校2年生の夏休み
何度目かの喫茶店デート。
「千葉君、これ食べてみる?」
目の前に食べかけのイチゴショート。
ドキッとして彼女の小さなフォークを手に取った。
イチゴショートは小悪魔の手先と化した。
我に返った視線の先に、少し残った麻婆。
すると「食べます? 食べかけだけど、よかったらどうぞ
素直に頷いてレンゲを伸ばす。
「う~ん、美味しい」
距離が縮まった感覚。
美味しく、ゆっくり食べられる「食空間」の中国料理「空」に感謝。
やる気になった帰り道
「あのドキッとした思春期の線上で、私は今日も生きている」