<音楽が出ます、音量に注意>
<久し振りに手にしたラケットの感触・懐かしく>
暑い!
北国にまで、赤道が歪んで近づいたようで、「熱い」
子供の頃は「入道雲」と夕立の後の涼風が風鈴を鳴らしたもの。
ところが今は「積乱雲」の豪雨が川を褐色の濁流に変えてしまう。
「地球は、大丈夫かな」
ブツブツ言いながら、東北自動車道を南下。
花巻南インターで降り、西へ。
しばらく走れば志戸平温泉など温泉が続く、勝手に「温泉街道」と呼んでいる。
目指すは「大沢温泉」
茅葺の宿などもあり、歴史が宿る人気の温泉。
川を眺める混浴露天風呂も。
お風呂の前にランチは「やはぎ」にて。
大沢の地で育まれた「じゅん蕎麦」と天婦羅の盛合わせ。
一緒に仕事をしたカメラマンさんも時々食べては絶賛。
関東からのブログ仲間も盛岡へ来る前に泊まったり。
香り豊かで美味しい。
満足して帳場へ。
「そう言えば、卓球台ありましたよね」
バッグを預けながら聞いてみた。
「はい、一回1時間で一人100円です」
「そうですか、やりたくても一人じゃ出来ないし今度にします」
ふいに背中から、
「あの、私も卓球したいんですが、どうでしょう?」
「えっ・・・」
「女じゃ嫌ですか?」
「そんな、それじゃあ、お手合わせをお願いします」
「嬉しい、やった!」
ラケット2枚を差し出しながら帳場の人が言う。
「暑いですよ、ホールに2台ですが高い所にありまして暑いですよ」
卓球で繋がった見ず知らずの2人の息が合う。
「大丈夫です!」
木の階段を登る。
締め切った室内は、ちょっとしたサウナ。
窓を開け、風を入れる。
昭和の匂いが満ち満ちて舞台もある。
相手をしてくれた人
勤めていた会社を辞め、専門学校へ通い、国家資格を受験したばかり。
結果を待つ間、関西から初めての北東北を巡る旅。
その日は大沢温泉に泊り、乳頭温泉や弘前へ行くと言う。
いよいよ3セット先取の試合開始
レシーブからだ、いざ!
「あれ~」
初めから大空振り。
体を九の字にした敵の笑い声がホールに響く。
何度も大空振りで、1セットは11対4(こんなはずじゃ・・・)
汗拭きタイムを要求して素振り。
顎に集まる変な汗。
中学で1年半の卓球部の小さな自信が消えていく。
敵のしなやかに伸びた二の腕には無駄がなく、安定した素早いフットワーク。
経験者に違いない。
更に、やっかいなのは動く度に揺れる白いタンクトップと汗を浮かべても爽やかな笑顔。
第2セットも大差。
「すぐ終わっちゃいますね、5セットマッチにしましょう?」と言うと、
「おまかせします、いいですよ」と余裕。
3セットも取られ、4セットは善戦し11対9、
5セットは、シーソーゲームだったが、ようやく1セット取った。
次も粘ったが14対12
5-1で完全な敗北。
「お陰様で卓球ができましたが完敗です」
「楽しかった!後は、ゆっくり温泉ですね」
窓を開けると風が入る。熱気が上から出て足元から入る緑風。
椅子に腰かけ、
「初めての場所で、地元の方とゆっくり話せたし、まさかの卓球!」
「それに、いい所ですね、自然の中で暮らす人達は優しいのかな~」
ラケットを返して帳場の前。
彼女は、笑顔で右手を出してくる。
「ありがとう」握手でそれぞれに戻った。
温泉のお湯と満たされた想いに浸り、心身共にほっこりと。
旅の人の
「ありがとう」がちよっと甘く尾を引いて・・・