盛岡駅前「すし源」は、改装したらしい
すし源に行きたいと言う人を連れて、いつもの様に戸を開けた。
「えっ!」
ほんとうに足が止まった。違う店かと思うほど中が一変。
落ち着いた「高級鮨店」の雰囲気。
しかもカウンターに立つ人は、見たことがない。
一階は、いっぱいだった。
「お二人様ですね、二階へどうぞ」
と女性に言われるままに階段を上ったが、財布の中身を思った。
二階にも数人の客が肴や天婦羅を拡げ、ビールを呑んでいる。
奥のテーブルに座り、見回すと小あがりも足を下せるようになっていた。
ちょっと覚悟を決め、メニューを開くと1500円からのセットもあった。
お茶を運んで来た女性に聞くと、
親方は、少し体調も良くなく、息子夫婦に引き継いだとのこと。
確かに前に来た時、親方は少し無理している様に見えた。
今も店に顔を出すらしい。
おしぼりを手に一緒の人が、
「良かったわね、店も綺麗になって息子さん達が引き継ぐなんて、いい話ね」
食いしん爺は、勝手を言い小肌を二貫入れてもらった。
一緒の人の1500円のセットは、こんな感じで巻物と吸い物がつく。
「美味しそう!」と言うなり、口に運んでニコニコ。
親方の「バクライ」は今はなかったが、しばらくして、
ホヤの塩辛みたいにしたものを「よろしければ」と持って来てくれた。
ほお~ 美味しい!
小学校六年か、中学一年か定かではないが、その頃のこと
父が「今日は、鮨屋に行く。カウンターで好きな物を頼んでいい」と言った。
鮨は桶に入って出て来るものと思っていたが、食べたい物を選ぶシステムを知った。
その夜は、なにかで母が遅かったのだと想う。
向かう途中、
父は「中華そばが食べたい」と言い出し、父と妹と三人で食べた。
そして、いよいよ鮨屋に到着。
「なんでもいいぞ」の掛け声に、「雲丹」「鮪」「イクラ」と続ける。
たぶんボーナスの直後だったのだろう。
父は、日本酒を飲んでニコニコ。
食いしん坊と妹は、次々と平らげていると、
「卵は?干瓢巻も美味いぞ、食べなさい、それから烏賊は」
など子供達の返事も待たずに注文。
後から聞いた話では、子供とはいえ食べ盛りなので心配になり、
中華そばを食べてから行ったものの我が子の食べっぷりに驚き、安いネタを薦めたのだ。
その頃すでに、ご飯を丼飯でお代わりしていた。
おかげて結局185センチまで育った。
そして巻物二人前
食いしん爺は、干瓢巻が子供の頃からの好物。
勿論、鉄火も美味い!
汁もの
とても美味しかった。
丁度食べ終えた頃、若奥さんが
「今、親方が見えました」と教えてくれた。
一階で親方は、客の様に椅子に座り、ただのウーロン茶かウーロン杯かを呑んでいた。
「おう~ 千葉さん!」両手で握手。
「たまには中に入ったりしないんですか?」
「もう任せてますよ、俺より美味いと思うよ」
親方の「赤出汁」の話をすると、
「赤出汁が欲しい時は、前もって言ってもらえば・・・ん~無理かな」
息子さんの方を見ながら笑う。
もう任せたのだ。
店の改装も息子さんの考えなのだろう。
店の様子は変わったが、息子さんの味もとても美味しかった。
「すし源」は、二代目に引き継がれた。
ここで、想い出を語るには持ってこいだ。
今月下旬のプチ同窓会は、此処に決めた。