<音楽が出ます。音量に注意>
一杯の牛乳を飲んだ
5、6年ほど前は、
「スッキリとしてコクがある。とにかく喉越しが心地良い」と自分は書いていた。
しかし、今になって飲んでみると、もっともっと深い味がした。
数日後には、その人の牧場に向かっていた。
あの牛達が食べる「シバ」の上で話を聴きたくなった。
たぶん当時の取材感と今を確認したくなったのだと想う。
あともう一つは、病み上がりで出かけたくて仕方なかった。
<山地酪農の 志ろがねの牧 吉塚 公雄さん>
盛岡から岩泉を抜けて小本まで。
そこから国道を北に。
田野畑を通り、尾肝要へ。
産直の辺りから岩泉方面に向かい、道なりに走る。
実は、岩泉からグリーンロードとかいう道を行くと早いのだが、
道に迷った数年前の取材の時と同じルートで行ってみたかった。
岩泉の道の駅にも、
尾肝要の産直では、ソフトクリームまであった。
とても美味しいソフトクリームだった。
牛乳の香りかとてもいい。
だんだんと牧場が近くなる。
吉塚さん一家の明るい笑顔が浮かぶ。
到着早々、牧場に連れて行ってもらう。
牛達は、雄の周囲に固まっていて、今は刺激しないことが大切だそうだ。
目的の「シバ」 ここで吉塚さんから話を聴きたかったのだ。
今も、元気に馬がいた。
静かに芝を食べていた。
ここの動物たちは、
他にワンちゃんもいるが、みんな活き活きとして伸び伸びしている。
これだ、ふかふかのしっかりと土を覆ったシバ。
このシバは、大変な被害もたらしたゲリラ豪雨からも山を守った。
ポロンと、どんぐりが一つ。
お宅に寄らせてもらって、次は息子さんの話も聴いた。
ヨーグルトやチーズの加工担当。
牛乳の良さを知っているだけに美味しいものに仕上げている。
チーズは開発されたばかりらしいが、クリーミィーで美味しい。
活き活きとした山地酪農の牛乳らしさが詰まっていた。
<加工の話になるとお父さんの出番は、ほとんどなくなる(笑)>
息子さんに尋ねてみた。
お父さんは、昔の大変な苦労話などあまりしないのでは?
「いいえ、時々、意見が対立しそうになったりするとありますね~」
「自分達は、その苦労の上に立っていることは承知しているつもり」ときっぱり。
しかし、良い物を作りたいという想いから父と息子達は、議論もする。
こうして山地酪農の心は、しっかりと受け継がれていくのだろう。
羨ましい限りの親子像に、日本が失いつつある家族の原風景を見ている気がした。
実は昨日、メールで、
「牛乳がなくなり、チーズやヨーグルトを作って試食してもらえないので、一日伸ばして欲しい」
と連絡がきた。
しかし、食いしん爺は、芝をの上で吉塚さんの話が聞きたいのです。
天気の良さそうなので行きますと返事した。
ところが、「なんとか牛乳があった」と用意してくれていた。
何度もお代わりして飲んだ。
年間の搾乳量が三分の一でも、長く生きて食べたいだけ芝草を食べ、寝転がり、
牛らしい暮らしをしている。
美味しいのは当たり前なんだろう。
その牛乳は、まろやかで、飲むと自分の身体も喜んでいる気がする。
さらに素晴らしいのは、息子さん達がしっかり次の時代に向かっている。
吉塚さんと奥さんも、沢山の家族と共にまだまだ元気だ。
来年の新緑の頃、青々とした草地の中で、元気な牛達と吉塚一家を是非とも取材しに来たい。
そう告げて、「志ろがねの牧」を後にした。
前のように、しばらく手を振って見送ってくれた。
その牛乳で作られたプリンを盛岡で食べれることも嬉しい。
明日、食べに行こう。
「NAGAWA COFFEE」か「機屋」さんか、さてどちらにしよう。