昼前に、一つ用事を済ましてコンビの駐車場。

シートに深く座り込む。

「ふと」って奴が始まった。

人との出逢いってなんだろう?

止まらない。生きるとは?

溜息が天井に、心はうな垂れ、切なさと憂鬱が車の中を支配する。

 

珈琲の香りは、ただ鼻孔を抜けては拡散するばかり。

通る人ですら無機質に見えてしまったり。

「生きている」と実感する時は、たいてい一人じゃない。

逢いたくても逢えない。

それは、距離。物理的な遠さ、時間。そして近くても遠い心の距離。

「オッと」

カップから珈琲が零れそうになって我に返った。

切なさに捕らわれても、誰かに会えば、普通の顔が出来る。

そう、仮面の奥から覗く様に相手を見る自分。

 

心の切り替えも上手になった。

「こんな時は、美味しいものに限る」

 

<盛岡、鮨懐石の重兵衛でランチ>

 

「すいません、ミズダコを別に食べたいんですが」

「はい、ミズダコですね。分かりました」

ここのミズダコは、初めての楽しみ。

 

 

この前、レストラン「和かな」で知った臭みの全くないサーモンと同じ艶。

甘く口の中でとろけるはずだ。

間違いない。

食で知る事だけは、すぐ脳に刻み込まれて消えない。

あの八幡平サーモンだと思う。

 

 

カウンターの端から店内を見回したり、綺麗に並ぶネタを見たり。

眼で十分楽しんだ。

 

 

小肌から。

何と言うのだろう、光ものが不得意で、鮨通じゃない「食いしん爺」も唸る。

リーズナブルで、美味しい盛岡駅前「すし源」とここの小肌は大好物。

重兵衛のは、歯応えに続いて拡がる品の良い酸味と小肌独特の食いしん爺の苦手な味と匂いを微かに残し、小肌の良いところだけを生かしているのだと思った。

美味しい。

鮨がますます好きなる。

次々と食べるのが食いしん爺。

あっという間。

 

 

美味しい物を食べて、気分が変れる自分になった。

そこは、とても気に入っている。

 

さて、会計。

「千円になります」

「あれ、ミズダコをリクエストしたのですが、千円ですか?」

「はい、今日は、はじめから入ったと思います」

ランチを食べやすい価格にして、

まずは「重兵衛の鮨」を食べてもらいたいという。

そういえば、先に席を立った2人は、美味しいと言いながら、

夜の予約をして帰った。

 

千円で美味しい鮨を食べて、満足。

今日は、帰って一休みしよう。

 

 

あれ、ルハン君?

 

 

君もか? 憂いが部屋中に漂っている。

 

 

隣に横になる。

耳の下、後ろと撫でる。

憂いは、瞼に塞がれた。

 

「食」で満足し、ゴロリとルハン君とよ寝転がる。

しばし、昼寝しよう。

ホットカーペットの上で。

そうすれば、一人と一匹、いや二人のちょっとした切ない想いと憂鬱は、

凍らずに溶けてしまうね。

目を醒まし、熱い珈琲でREBORN リボーン、再生だね。

 

 

ルハン君、今夜は皆既日食だ、

月が消えるんだって。

おやすみ~