<音楽が出ます、音量に注意>

 

 

アメショウ君に聞いてみたい。

「君は、毎日が楽しい? しあわせなの?」

 

この夏のある日

岩手山麓の森の中にあるパン屋で、

サンドイッチと珈琲を買い、店の庭先のベンチで食べることにした。

ちょうど木のテーブルにスポットライトの様な木漏れ日。

涼しい風、

柔らかに抜けて行く。

 

 

鶏肉のハムとトマトのサンドイッチ

美味しそうだ!

まずは、珈琲を一口、

とその時、

 

 

背後から、小さい声ながら殺気立つ、低い鳴き声、

驚いて振り返ると白い猫。

続けて鳴く。

立ち上がると2、3歩後ずさり。

2メートルほどの距離は縮まりそうもない。

 

 

飢えつつも警戒

パンをちぎって足元にそっと投げた。

無心に食べ、また、鳴く。

鳴くと言うより、唸る感じ。

手を差し伸べると数歩下がる。

耳の辺り、背中、あちこち小さな傷。

猫たち同士の争い、病、それとも外の生き物のせい。

傷は、心にもありそうだ。

 

風が運んだ微かなパンの匂いを嗅ぎつけ辿って来た。

とても美味しいパンの切れ端、

続けて投げると黙々と食べる。

 

 

ずいぶん食べた。

わずかに表情が和んだかも。

そっと近寄ってみると小走りに隣の家の陰に消えた。

どこか歪な後ろ足の運び。

 

サンドウィッチは半分ほど分けたが、

白猫との距離は縮まらなかった。

 

 

 

いつもよりゆっくりのペースで珈琲を飲む。

でも、現れなかった。

どこかで身づくろいでも、していれば、

それでいい。

 

この別荘地は、原野の区画も目立ち、通年で暮らす人も少なそうだ。

昨年の11月に来た時、

早々に降った雪が日陰に残っていた。

別荘地の入口近くで、

白猫と黒猫を見かけ、車を止めたが森に消えた。

ここで、どれほどの猫達が暮らしているのだろう。

 

今年も凍てつく冬が来る

秋も深まれば、すぐ岩手山麓は冬の気配。

この辺りは雪も深く、真冬の寒さは氷点下も二桁にもなる。

 

飢えても怯えていても、どこか凛とした姿が心に残る。

帰り道、ハンドルを握りながら、溜息一つ。

自分に出来たのは、一生分の一食。

 

家に着くとアメショウ君は、待ってましたと部屋や廊下を駆け巡る。

安心に包まれて眠り、飢えも寒さの心配もない。

隙をみて玄関のドアから外界に出たがる。

あの森に、一度、放したものなら全速力で駆け巡り、

生きる術も持たないまま、

森の茂みの奥深くに入り、二度と戻らない気がしてならない。

 

忙しい日々が続いていた。

今日は、アメショウ君と腰をすえて遊ぼう。

どこに隠れていても、飛んで来る大好物の鰹の削り節もある。

 

自分で生きる猫達は、道路を渡るのも命がけ。

街の猫達は、雪が積もれば車の下や廃屋で寄り添い、

暖をとったり、潜んでいたり。

必死で生きている。

 

先週、森にパンを買いに行った

陽も傾いた頃に着いたが、姿は見えなかった。

猫達の暮らしの比較に意味があるのかは、分からない。

森の緑は、勢いを無くし、山麓に吹く風は、冷たかった。

 

その夜は、弱めに暖房を入れた。

アメショウ君の後ろ姿を眺めながら珈琲を飲んでいた。

ところで自分は、幸せなんだろうか?

それだって、よくわからない。

テレビでは、近頃、政治家の政権争い、罵り合いの報道ばかり。

 

 

 

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