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盛岡、
岩手県庁と公会堂の間の道から本町に向かう通り、
大手先辺り。
「そろそろ一息つきませんか?」
と2人に声をかけると、
「それなら、この間、行ってきた喫茶『ママ』に行きましょう」
とSさん。
「ママかぁ~ あの古い喫茶店ね、行ってみましょう!」
とM氏。
思い起こせば、
だいぶ昔、一度だけ入った事があるが、
その後入った記憶がない。
行ってみたい。
盛岡で一番古い喫茶店と言われる
喫茶「ママ」
ママの看板は「MAMA」
このシンプルな感じ、とてもいい。
カウンターに並ぶ常連さんは、
寛ぎの時を思い思いに過ごす。
ボックスでは珈琲のお代わり。
数年前に改装されたが、
昔、入った時も、
こんな色調だったと想う。
ただ、微かに残っている残像は、焦げ茶と橙が混じった様で、
それで、もっと薄暗かったような・・・
いつ頃、誰と来たかの記憶もない。
若かりし頃、
少し気負って大人のドアを開けたような気がする。
「実は、この間、呑みに来ました。ハイボールとかの気分でした」
ニコニコ顔でSさん。
「ほう~」
「サクッと呑んで、ストレス解消ってとこですか?」
とM氏は、話しながらメニューを開く。
「へぇー、レスカがあるね~」
懐かしい響きのレスカとは、レモンスカッシュ。
「歴史を感じますね」
珈琲を持って来たママに言うと
「私で三代目なんですよ」
気さくに色々と語ってくれる。
「ゆっくりしてって、後は、そこに60年と70年の記念誌があるの」
指に馴染むコーヒーカップ、
学生時代によく行った東京の下町の古い喫茶店を想い出す。
盛岡には、ママがある。
そのことが、とても嬉しい。
地元の梨を使った、ジュースは、
新鮮な梨の果汁が瑞々しい、ごらんのとおり。
見るからに美味しそうだ。
ひとくちに80余年と言っても、
遡れば、昭和初期。
太平洋戦争を挟んで、戦後の復興。
東京オリンピック、
オイルショック、バブル景気などを経て今に至る。
飲食店が長く続く事の難しさ。
それは、並大抵のことじゃないだろう。
喫茶「ママ」の歴史は、人の一生分の時間。
この店で交わされた言葉は、星の数。
それぞれの人生の欠片が、床に埋め込まれたビー玉みたいに
そこらじゅうに、転がっている気がする。
ほろ苦い珈琲の様な話、
夢、
恋の始まりと終わり、
などなど。
盛岡には、
小さな宝石の様に輝く、
個性的で魅力的な喫茶店がいっぱい。
そして息の長い店も多い。
盛岡の人は、珈琲好きが多く、喫茶店という場所も
好きなのだろう。
「今度、呑みに来よう」と誰からともなく。
椅子に深く腰掛け、
やはりハイボールがいい。
誰と来ようかな?
食いしん爺には不似合いだけれど、
隣同士で囁く様に話すのです。
「SPEAK LOW」
そろそろ秋、
夜長の季節の始まり、
今宵は、珈琲で夜更かしなど
いかがでしょう。