<音楽が出ます。音量に注意>
<大貫妙子さん・「横顔」> 

 

 

夏、

ブルベリーの季節、

軽快に坂を登り、miーcafeに

 

 

もう、林檎は、幼子の拳の大きさにまでなっている。

 

 

「ミ・カフェ」の夏、庭のラベンターが香る。

 

 

 

ブルベリーは、熟して、美味しそうな色。

 

 

空の蒼を凝縮した蒼紫

 

 

 

 

 

 

今日も、いつもの席。

隣に誰かが楽しそうに座っている気配。

 

 

待ちに待った、ブルーベリー。

爽やかで口の中で濃厚なミルクが拡がる。

大人の味。

 

 

青春の甘酸っぱさを詰め込んだ様なブルーベリー、

今年も美味しい。

 

 

勿論、アップルパイも美味。

 

 

 

一か月半を費やしても終わらない断捨離の最中に、

出て来た古い封筒。

セピア色の中に七枚の便箋。

7枚目だけ、縦書き。

「好きな便せんが無くなったので、あまり好きじゃないのにします」

 

高校時代より、卒業してから、

仲良しになった人がいた。

大学を卒業する頃には、弘前から何度か東京にも来た。

終電を忘れ、

夜明けまで呑み明かした。

 

その人は、東京での就職を目指した。

面接で自分の目指す職業の世界観を全面的に否定される。

食い下がったものの、悔しくて泣いてしまった。

帰りの電車で、

その場で泣いた自分が嫌で、

また、涙が出たという。

彼女は、そんな時に必死になった自分に驚いた。

友達は、「らしくない」と驚き、仲間で徹底的に呑んだらしい。

「一緒に呑みたかった」

「就職も内定し、暇でしょ、(You) 手紙を読んで感じたことを遠慮なしに、言って欲しい」

と蒼いインクで書いてあった。

 

 

 

先日のクラス会。

 

亡くなった級友の名簿に釘付けになる。

今年、つい最近に逝ってしまった。

古い友人がため息交じりに言った。

「驚いたね、美人薄命・・・淋しいね」

 

社会人になりたての頃に逢ったのが最後になった。

 

 

「あなたに負けず、字は下手だけど、これでも始めは、

上手く書こうと試みたのです。(無理だった)」

で終わる7枚の手紙は、かけがえのない物になった。

 

「ミ・カフェ」で想い出す彼女は、

高校を卒業したばかりの眩しい笑顔のまま、

空を眺めたまま、

僕の肩を何度も強く叩く。

 

 

 

人の人生ほども生きている林檎の古木も

まだまだ、元気そうだ。

 

遥か昔、

彼女は、頬杖をついて

大きな眼で睨むようにしてよく言った。

「隣で、あなたの横顔を見てると落ち着くんだよ」