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今年の花見は、贅沢、
cafe「六月の鹿」の窓辺から、珈琲とスコーンと、そして満開の桜
ある人から聞いた
桜山にあるcafeの大きな窓から見える桜の花。
その散る瞬間、
それも傾いた陽を浴び、輝き舞い散る一片を狙う人がいると。
桜山という一帯は、盛岡城址を背にした桜山神社の道路向かい。
北側は、内丸と言って岩手県庁などの官庁街。
東西は、池の様に残っている内堀に挟まれている。
そこを「桜山」と皆が呼ぶ。
桜山神社の御守印
真ん中の路地には、鳥居が3本。
参道なのだ。
幾つかの路地に沢山の店がひしめく。
路地に入れば、そこは、すっぽり昭和の時空。
近頃は、若い人達も店を出している。
桜山にあるcafe「六月の鹿」のドアを開けた
一目で、分かった。
「ひとひら」を狙うのは、マスターだ。
窓に立ち、カメラ片手に風を待っていた
店の奥には大きな窓、その窓いつぱいに、桜
迷わず、窓に向かう席に。
椅子は、ゆったり座れ、これは長居してしまう。
内堀の名残の池、その土手に満開の桜。
微かな風で、舞い散りそうだ。
狭い路地を歩く人達は、
店の中を、ちらりと見て、
直ぐに視線を逸らし、通り過ぎる。
母と子が、向こう岸を歩いて来た。
小さな子は、時折、桜を指差す母の周りを行ったり来たり。
桜は、美しさを誇示するかの様に、じっと動かない。
撮れましたか?と聞いてみた。
「どうにも、今日は風が無くて」
傾いた陽が、一番左側の桜を照らし出した。
マスターのシャッターチャンスの時、
しかし風は無い。
ここは贅沢な場所
一番、綺麗で、いい時間なのに、
「お客さんが少ないんですよ」
と苦笑い。
「クルミのスコーン」にメイプルシロップをたっぷり。
美味しく、とっておきの「贅沢時間」
5時半を過ぎる。
人通りも途切れなくなり、何度か知り合いと眼が合い、
手を振ったり、会釈したり。
今日は金曜、花見にうってつけ。
ドアが開いて、かなり背の高い女性が入って来て、
一瞬立ち止まる。
マスターが手でカウンターに誘う。
腰を下ろしながら、こちらを見た。
窓際を占領され、仕方なくカウンターに座った風だ。
続いて、男の人。
珈琲の豆を頼み、後ろのテーブルに座り窓を見る。
ちらっと振り向くと、
彼は、窓の方に眼を向け、
「へぇ~、いい時に来た、綺麗だ!」と得した顔。
カウンターで窓辺が空くのを待つ女、今日の、ひとひらを諦めたマスター、
背中越しでも景色に満足げの男。
何か、ドラマでも始まりそうな雰囲気
満足して店を出た足で池に向かったのは、
傍で桜を見ながら、窓辺に蒼いシャツの女性が、
座っているかを確かめたかったのだ。
窓を見ると、やはり。
ある人が言った。
桜は、風がよく似合う。
風は、どの季節だって見えないけれど、桜の花を乗せて、
不思議な色になると。
3日後
連休の最中、店は混んでいてカウンターの端へ。
やはり、爺には平日の夕方がいい様だ。
まだ、昼下がり。
薄く焼いたバタートーストにたっぷりのメイプルシロップが溶け込む。
英国風?
お菓子の様にカリカリとして、美味しく、
好きになった。
桜は、既に葉桜。
散ると、花に隠れていた若葉が樹を覆う。
実は、したたかな生き物。
その変り様に、ある人の顔がくっきりと浮かんだ。
爺の狙うシャッターチャンス、
儚げに散る桜と陰に隠れていた瑞々しい若葉の一枚。
まだ、捕らえ切れていない。
爺は、桜が好きなのか、見極めたいだけなのか