<音楽が出ます、音量に注意>
新しいメンバーで一つ、仕事が終わった。
延び延びになっていた打上げ。
それぞれが忙しく、日程の調整も大難航。
でも、
同じメンバーで、
次の仕事もある。
新企画の話をしつつ、呑みたい。
盛岡は、青山町、焼き鳥「かつ」
当たり前だが、
メンバーが違うと場所も呑みの雰囲気だって違う。
久し振りの青山町。
「かつ」で思い出した。
ここがお気に入りの人がいて、何度か誘われた。
あの頃、来たかもしれない。
なにぶん、20数年も前の事。
店に入り、
見回せぱ、いい匂いに胃が騒ぐ。
今回は、幹事長のお薦め。
彼は、まだ盛岡に着いていない。
でも、女性のメンバーも含め、腹ペコで喉も乾いている。
待ちながら、軽めにのはずが、
「この餃子、いける!」
「ネギマも、ツクネも美味しい!次は何にします?」
爺の大好きなレバー。
美味い!
つい、ビールがすすむのは、焼き鳥のせい。
ポピュラーな焼き鳥の名前は、イングリッシュ。
レバー、ハツ、タンなど肝臓、心臓、舌と名前を呼ぶより洒落ている。
ハツからして明治英語っぽい。
あくまで食いしん爺の推測。
焼き鳥の始まりの歴史において、
明治期に、きっと呼名を美味しそうにと考えた人がいる。
名前も大切。
ゆっくり、部屋を見回す。
カウンターの突き当りにある入口。
脱いだ靴を持ってドアを開ける。
まるで隠し部屋。
下駄箱も。
空けると、目の前は店のカウンターの中。
部屋の片隅にある30センチ四方ほどの小窓。
開けるとカウンターの中と繋がる。
そこから紙切れに、ビールとつくね5本、レバー5本。
と書いたメモを渡して注文完了。
「そうだ、来た事がある」
ほろ酔いで、小窓を見ているうちに蘇る記憶。
20数年以上前だ。
その頃、個性的な面子が揃っていた。
若さもあり、呑めば、必ずはしご。
その夜も小窓から、続々と焼き鳥の注文。
2軒、3軒と続く。
タクシー代まで無くなった。
酔えば酔うほど、浮かぶ待つ人の姿。
「来るまで待ってますから」
当時は、携帯も無い。
深夜に辿り着いた喫茶店。
結局、数時間も待たせ、挙句の果ての千鳥足。
「来ると思ってた。丁度、読み終わった」
と優しい笑顔が胸を突き刺す。
コーヒーカップの傍らの文庫本が、やたら分厚く見えた。
自分の心すら持て甘し、明日が見えない。
いや、見ようとしなかった。
その頃の夢を追いかけ、
待たれる事からの逃避だったのか。
幹事長が到着。
すでに乱雑なテーブル。
「改めて乾杯!」
「ココに来たら、これを食べなくては」
と手ほどきが始まる。
なるほど、詳しい部位は忘れたが、
「軟骨」
コリコリして美味い。
使い込まれた褐色のテーブルに焼き鳥は、良く似合う。
一味の紅もたっぷりと。
遂に、
ビールから日本酒、もっきりに。
テーブルの上は最高潮。
そして、その上を飛び交う、笑い声。
次も良い仕事になるに違いない。
次の店に行くことになり、「かつ」を後に。
チラリと見回した店の中。
青春の残像が、片隅に漂っていた。
青春の
恋の形見の
愛おしさ
生きる隙間に
漂う心
やはり、皆、席は、端っこ。
座板の傷が物語る。
店を出ると、
もう皆は、街灯の下を歩いている。
足取りは、しっかりと。
今宵は、
実に美味しい焼き鳥と酒と青春の残像に
気持ち良く、酔った。