<音楽が出ます、音量に注意>

 

 

今夜は、いつにも増して、忙しそう。

普段、厨房で采配を振るうおかみさんが、珍しく注文を聞きに来た。

「ちょうど今日、新玉ねぎ入りました」

甘い玉ねぎの誘惑。

 

来た!

ここで「ハクション」なんて事になったら事件。

妄想、

「ハックション!」

ふわ~と半径1メートルに拡散し、ひらひらと無数に舞う鰹節のスローモーション。

ちょっと見てみたい。

いい匂いも広がったりして。

 

 

これだけ見れば、これから寸胴や大鍋に入れ、

一番出汁を採る前の様だ。

 

鰹節と削り節

鰹節は、あの例の硬い物。「鉋(かんな)」で削る。

「削り節」と言うらしい。

今では、あの削る純日本的な道具は、見なくなった。

母の実家の広い台所から聞こえたカツカツという音が懐かしい。

 

鰹節は、今の形に近くなったのが室町時代らしく、歴史ある日本食の調味料。

カビで硬化を助け、旨味も凝縮。

でも、今、贈答品として送ると、

受け取った人がカビを見て、ダメになったと勘違いする事があり、

注意書きを添えるらしい。

 

 

この、ふわふわの下に新玉ねぎのスライスが隠れている。

そして、一番下に細くて美味しい蕎麦が待っている。

 

 

美味しくて顔が、ほころぶ。

後は、一気に。

 

 

上質の鰹節、いや削り節の中に箸を入れる。

いるいる。

まず、削り節が纏わりついた新玉ねぎ。

どうしてこんなに合うのだろう。

甘さと、シャキシャキ感だけでも幸福なのに、旨味が絡まる。

さらに、

ちょっと、なんだろう中華っぽい汁と細い蕎麦。

三味一体となり、爽やかに喉を過ぎる。

やってくれる、老舗蕎麦屋の「直利庵」

 

 

明治17年創業の老舗蕎麦屋「直利庵」のメニューは

色々あって見るだけで楽しい。

蕎麦湯を飲みながら、

「今度は、何にしよう?」

 

宮沢賢治と盛岡の蕎麦

賢治は、花巻から盛岡に来て、

大正2年開業の盛岡劇場で観劇の後、

八幡界隈の入口、旧生姜町辺りの蕎麦屋に、よく寄ったらしい。

賢治は、蕎麦を食べては蕎麦談義。

何でも、花巻では蕎麦とサイダーを頼んだという。そこは、あまり・・・・・

昔、この店は、生姜町寄りにあったそうだ。

ひょっとして食べたのは、直利庵かも。

もし、賢治が、オニオン蕎麦やカツ中華を食べたら

何と言っただろう?

 

 

権八

直利庵のテーブルには、ワサビも紅葉卸もない。

僕は、ざるには、蕎麦猪口にちよっと唐辛子を入る。

後は老舗のタレが蕎麦を美味しくする。

 

十年ほど前に、お爺さんと相席になった時、

「あのね、いつもの、権八。今日は、多めにね」と店の人に声をかけた。

権八、つまり紅葉おろしがテーブルに、どかっと。

そして、ポカンとしている相席の僕に言う。

「これを沢山、入れて食べると、なお旨い。よかったら」

 

さらに美味しかった。

 

その後、この店で権八を見た事はない。

今も元気で、お爺さんは、蕎麦を食べているだろうか。

 

 

 

アメショウ君の好物

玉ねぎは、こんなにも、しゃきしゃきして、甘いものか、とつくづく。

そして春も近いと思う。

実は、家で待つ、アメショウ君が削り節に目が無い。

勿論、あの小さいパック。

2日に一度ほど、ちよっとだけ。

すると御機嫌の証拠に尻尾を直立させ、

「みゃあ~」と甘く切ない声で鳴く。

 

家のドアを開ける前、口の周りを撫でた。

 

 

 

 

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