<音楽が出ます>

 

 

<めん処 はすの屋の支那麺> 盛岡の与の字橋を渡り、番屋の交差点近>

 

車をガソリンスタンドに預け、洗車、ワックスを頼んだ。

少し時間が出来た。時間は、1時半過ぎ。

行きたい処がある。

 

「めん処 はすの屋」

 

3、4年ぶりに暖簾を潜れば、また、引戸があるはず。

 

 

昼時は混むが、流石に、この時間はカウンターに一人だけ。

座ると、おかみさんが「おや?」という顔。

「久し振りに来ました」

「忘れられてなくて良かった。ありがとうございます」

「支那麺で」

 

 

サービスのご飯は、少なめに頼んだ。

確か、白飯の時と混ぜご飯の時がある。

今日は、混ぜご飯。

変わらず、美味しそう。

 

 

まず、ご飯、美味い。

 

 

続いて支那麺。

 

 

チャーシューは、大きいがトロトロ、箸でもてば、切れてしまうほど柔らかい。

でも、あっさり。

 

 

昼時を過ぎると、ゆっくりと時間が流れる。

 

開店して19年になると言う。

夫婦で、全国から煮干しを取り寄せ、

カウンターに味見用の白い小皿をズラリと並べ、取り寄せた煮干しを載せる。

それぞれの煮干しを口にしては、水を飲み、また口に。

繰り返し、求め続けた二人の味。

初めて聞く話。

 

開店して直ぐ、僕らは来ていた。当時は、二人で忙しそうだった。

それが数年後、突然、店を休んだ時期があった。

通っていた仲間達と心配した。

しばらくして店が開いたが、カウンターの中は一人だけになった。

その後、一緒の姿を見る事は無かった。

 

ひと頃、ふとした時のおかみさんに見えた翳りは、

しだいに薄くなり消えた様に見えた。

今も、夫婦で創り上げた味をしっかり、一人、静かに守り続けている。

 

今日は、ゆっくり話を聞けてよかった。

 

 

本当にシンプル、

スープは、透明であっさり、でも、しっかり旨味がある。

「変わらない味でした」

「ありがとうござます」

店の人は、お客を見ている。案外、客もカウンターの中を気にしているものだと、

二人で笑う。

もう一人のお客さんが、話に加わった。

有名店のラーメン屋でアルバイトをしていた事があると言う三十代。

「しばらく顔を見せないお客さん、いつもと違う雰囲気で入って来た常連さん、

新しいお客さんのスープの残し具合、など気になったものです」

その、お客さんが帰り際、

鉈屋町への行き方をおかみさんにたずねた。

丁寧かつ的確。食いしん爺の出番は無かった。

 

 

「変わらず、美味しかったです」

「ありがとうございます。また、お待ちしています」

よくあるやり取り。

しかし、作る側と食べる人の関係は、実は結構、濃い関係なのかもしれない。

 

 

また、戸を開けて二つ目の引き戸も開けて縄暖簾を潜った。

 

帰り際、おかみさんが、少し淋しげに言った。

「ふと考えてみたら、ここ十年で番屋と白沢煎餅さんの交差点から東西南北50メートルほどの狭い場所ですら、十件以上も店が変わったり、無くなったりしてます」

やはり、飲食店を続けるというのは大変な事なのだ。

 

 

もうすぐ、北国にも春が来る。

寒暖を繰り返し、日増しに陽射しは力強くなっていく。

 

 

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