病院に向かう道すがら、
久々に外を歩くと平衡感覚がおかしい。まだ、熱でもあるのかと思わず立ち止まり自分の足取りを確かめる。舗道の方が蒲鉾状態。
「もう、大丈夫ですね」 こんな時の医師の言葉は頼もしい。外出禁止令解除。
病院から戻り、入念に手洗いとうがい。
午後3時過ぎ、車に乗り込み暖機運転。久し振りのエンジン音。自分の暮らしが戻り始める。
裏道の屋根や空き地には白い毛布を掛けた様に雪。日陰はツルツルの盛岡の名物、氷の道。四輪駆動は必須。
中津川を東に渡り、古い街並みへ。ほぼ2週間ぶりの盛岡八幡宮に向かう一直線の通りは、いつもと変わらない。
「おっ、開いている」 車を止めた。
インフルA型が完治し、最初に八幡の「陽月」さんで買い物。我慢できずに、「ぶちょうほうまんじゅう」を一個口に入れた。
米粉の皮の口当たりと蜜のほどよい甘さ。旨い!
あれもこれも、買いも買ったり。
道明寺
もう近い、春、薫る。
桜の葉の塩漬けの具合も丁度良い。あっさりとした風味は飽きない。
道明寺粉とは、水に浸したもち米を蒸して粗目にひいたもの。表面の粒味が好きだ。
ちよっと落ち込んでいる、人がいる。
「不調法」より「春の香り」を手土産にしよう。
きりせんしょ
盛岡から南は、花巻、遠野辺りで作られる和菓子。
その昔、桃の節句に女子は作り方を教わったらしい。柔らかくシンプルな味で美味しい。
ぶちょうほう饅頭の小と大
米粉をこね(一生懸命)て作る。中に蜜が入っている。仕上げにクルミをのせる。食べる時、上品ぶって半分にすると蜜がブチュっと飛び出し不調法することも。小も大も買う。
東京と盛岡の2週間。
新宿の人波と煩雑な世界から、盛岡へ帰り、静寂と孤独。
この相対に位置する環境の中で自分という物が異様に拡大したり、
砂の様に小さくなって風に吹かれたり。
とにかく今は、食べたい物を口に入れる。この幸せ。
ぶちょうほうまんじゅう、きりせんしょ、道明寺と、どれも素朴で優しい味。
盛岡の味は、心温まる。
だから、意気消沈の人には打ってつけ。早速、届けに行こう。
さて、忙しい時と隔離された時間の約半月の間で一度だけ長い夢を見た。
その話は、いつか、また。