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ある人に誘われた。

花巻市東和町の土沢にある「萬鉄五郎記念館」で開催中の「杉村 英一展・未知なる空間を追い求めた北の異才」を見に行こうと。その日が最終日だった。

盛岡界隈では東北自動車道が盛土で高いからか、高速を上、一般の国道を下と呼ぶ。その日は下を走った。

杉村英一氏は、若い頃からモダンアートに没頭。若手の前衛美術家として岩手の美術をリードしてきた。色々な作風を辿って行く。独自の技法を駆使して線の集積で闇を表現したり、漆黒の箱に想いを詰め込んでみたり。観る人それぞれの感じ方を期待したのかもしれない。

詳しく知らなかったが、ゆっくり館内を巡った。

杉村氏は、助手席に乗せた人の版画の先生だった。

「なにをやっても上手くいかず、もう、自分には、とりえも何もないと思っていたけれど、版画を習っていた頃、先生も、まだ若くて、出来上がって物を真剣に見てくれてニコニコして「なかなかいいね~、いい」と褒めてくれた先生なの。」

と黒い箱を見つめながら、昨日の事の様に話す。

名前だけしか知らなかった一人の異才の世界に触れた。200点余りを駆け足で見終えた頃には、閉館時間だった。

 

外は、もう冷えた暗闇。

花巻での夕飯に誘った。

作品を見ながら北の大地からも萬鉄五郎や宮沢賢治と色々な人を輩出しているものだと改めて感心し、9月の花巻の秋祭りに来た時に見た篝火の中の鹿踊(ししおどり)の群舞を思い出した。山車も綺麗で神輿も100を超え、町中が祭り一色になる400年以上の歴史を誇る祭りだ。出店も多く人で溢れる。

その時、食べたのが、「ホテル花城」の屋台を見て「美味しい」を直感した。それが、「海老チリ焼きそば」だ。

それをホテル花城のレストラン「マグノリア」に行って食べてみようと誘った。

「美味しそうね。」

 

 

屋台のは焦げ目もあり、そこら辺りが、なんとも美味しかったのを舌が覚えていた。

 

 

 

 

チリソースに包まれた海老は、噛むとプリント割れる感じ。

 

 

 

版画を習っていた人は、お薦めよりも久々の釜飯を見つけて眼の色が変わる。

美味しそうだ。釜から湯気が勢いよく伸びる。

 

 

蒸らす間に天婦羅などを食べる。

 

 

確かに久し振りに見た釜飯。美味しそうだ。

 

 

地域で一番に美味しい店を目指すという意気込みのレストラン「マグノリア」は、お爺ちゃんから孫までの一家やカップルまで耳障りの良い賑わいだ。

美味しい時間はいいものだ。それぞれのテーブルが笑顔に満ちていた。

 

まだまだ、身近な処に知らない異才、美味なる物が沢山ありそうだ。

実を言うと誘った人の脚は、ギブスで固定中で脚が動けば一人で行く人だ。

いつか二人でカフェで会い、杉村英一氏の作品の話しを本を広げながら聞き、こちらからは花巻のチリソース焼きそばの美味しさを返す。

違う道を歩んでいても一緒に「作品と味」を楽しんだ事は、数年後に眼を輝かして話し合う様な想い出になるだろう。一人も良いが、「愉しさ、美味しさ」を人と共有することも当たり前の事だが大切にしたい。

異才の作品と海老チリ焼きそばは、とても、いい組み合わせの想い出となるに違いない。