仲間とランチをゆっくり食べる約束の金曜、焼肉の予定だった。
ところが、彼が都合で遅れることになり、食いしん爺も午後の予定が入ってしまい、
結局45分ほどのタイトなランチ。
そうだ、だったら盛岡劇場近くの「里伊(さい)」に行こう。ランチもやっている。
我ながら名案だ。というのは、ちょっとしたわけがあり、今日は、肉を食べるのだ。
ランチの相方が選んだのは、これ!
店のテーブルは、「ランプ」を利用している。
木製で二つ折りにできて段差に置いて車椅子でも敷居を渡りやすくする優れもの。
里伊の外、八幡界隈では色々な店に置いてある。
人に優しい街づくりの一環。この板には、子供達の絵を描いてある。
里伊では、お客さんが書いて完成する。
ランチメニュー。
何にしようか? どれも美味しそうで食いしん爺は、珍しく迷う。
気立ての良いマスターに、お願いしてみた。
「あの、チューリップが食べたくて、単品でもいいですか?」
「大丈夫ですよ。」
この、包み込んでくれる眼がいい。
「この店をいっつも、お客さんで賑わう場所にしたいんです。」
と熱く語っていた事がある。今日のランチは、先ほどまで混んでいた様だ。
店の界隈の人にも人気だ。ここでライブもやる。
盛岡劇場のある八幡界隈では、「わかんたんか」など外の居酒屋などでもライブの会場に早変わり。
もともと、この街にはライブハウスもあり、毎週どこかでライブがある。
食いしん爺は、そのうちにイベントカレンダーを作ろうと思っている。
タイトルは「盛岡・あっちもこっちも」いや、違うな「一度では、分からない街」「宣伝の下手な街」などなど、名前は、未定。
「食いしん爺の「八幡界隈、街歩きマップ」も勝手に作ろうと思っている。
とにかく紹介したい場所が、四方山ある。
「マスター!1枚、いいですか?」
「こんなもんで?」 カシャ!
食いしん爺は、チューリップを追加したので「カキフライ定食」にした。三陸の海の恵み、一つが大きい。
「さくさく」と「ジューシー」のコラボ。美味しい!
肉を食べるので向かいの席には、「ぶた丼」
彼の箸は、忙しい。
きたきた! チューリップ。鳥の骨付きから揚げだ。これが美味しい。
これで彼は、「ブタ」と「トリ」の肉を食べ、爺は大きなカキをたっぷり食べてチューリップ。
里伊に呑みに来ると女性は、たいていチューリップを見て「懐かしい!」とはしゃぐ。
「子供の頃のお弁当に入っていると嬉しかった。」と言う。爺の弁当では見たことがなかった。
中学の頃、母に持たされた弁当は、時々、ご飯が寄って隙間ができていた。コロッケには、キャベツが目いっぱいに敷かれていた。ある日、小さな魚の形の醤油入れが見当たらなかった。あからさまに「ありゃあ?」という顔をしたのだと思う。
隣の席の女子が、醤油が入った小さい魚を中学1年の思春期の爺に差し、言った。
「何もかけないで、食べるの?」
「うん」
と咄嗟に意地をはり、千切りのキャベツを豪快に口に入れた。
小学6年、中1の辺りは、なんだか女の子が自分達よりも先を生きて大人っぽく見える事が、よくあった。ちょっと母親みたいで癪だった。
「ふぅ~ん」
意地を張っても余裕の笑みで、軽くいなされた。
でも、母の手作りコロッケは大好きだった。そんな事を思い出させてくれる店だ。
今日、何故、肉なのか?
実は、ランチの相手は明後日にライブを控えた若手JAZZピアニスト。
2人とも肉は2日後にエネルギーになると信じている。
彼は、ライブに向けて力を蓄え、爺は彼のピアノを聴きに行く。
肉のランチも時間内に美味しく終わった。
彼は、ライブに向けて充電完了。
ところで食いしん爺は、何のために肉を食べたのか?
ちゃんと、2時間、全身でライブを聴くのだ。