久し振りの東京。
この前、逢ったのは春、そよ風が君の頬を撫でたよね。
9月の下旬、7時の新幹線で盛岡から東京へ。
始まりは、時間がゆっくり流れるカフェで珈琲。今日は「ヘッケルン」でとっておきのモーニング。名物の「ビックプリン」 ガラスの器、いっぱいに。
「何年になります?」
「かれこれ、40年だね。」とあっさり笑う。
長い間、続く店の味。入れ代わり立ち代わり、お客さんは途切れない。マスターと話す人、新聞を広げる音、笑い声。狭い店の中は、居心地の良い賑やかさ。
サイフォンで淹れるたっぷりの珈琲。
向かいに座るのは、テーブルに頬杖をついた、君なんだ。
40年も店を続けるという事は、お客さんを大切にしているからだと思う。様々な人が、ほっとする場所でなければならない。
人と人の関係では、どうなんだろう? 40年、「ときめき」を忘れず、君を大切に?!
外に出ると、グレイの空から、ついに雨粒が落ちて来た。東京は、今日も雨。
傘は一つで十分。東京には地下やビルの中にも街がある。
君についてランチの場所に行く。
品川の「つばめKIТCHENアトレ」
二人のランチは、春以来。君は、軽く腕まくりして「さぁ、食べるぞ!」愉しいランチのひと時、夢じゃなければいい。
たいてい半分ほど綺麗に残してくれる。君は、僕の大好きなロールキャベツをオーダーした。半分ほどは食べれることになる。でも、春の鰻は違ってた。
東京で、よく洋食を食べる。
古くからの店が、ビルに移っても古き良き味を今に伝える。名物の一つ、ハンバーグで美味しい時間。
ナイフを入れると身体の消化酵素が目を覚ます。自然に美味しいの笑顔が滲み出る。
ジャガバターも、ほくほくで美味しい。
いつか君は言った。
「ほんとに幸せそうに食べる人。そんな、あなたの顔を見てるのがね、すごく嬉しい。」
食べっぷりに見とてれているとは。それからは、食べ始めに意識してしまう、が、すぐに美味しさに夢中になってしまう。
「どう?」
と聞かれて顔を上げた。
「うん、美味しいね~」確かに自分は、笑っている。
帰りは、銀座から東京駅まで歩く。
時々、寄り道して買い物。
東京の魅力は何だろう?
摩天楼の裏には、江戸からの時代の匂いが漂う。そんな場所が山ほどある。駅から伸びる道の狭い商店街には、たいてい人気の肉屋のコロッケがあり、八百屋、魚屋の威勢がいい。専門店が並び賑わっている。
一方、銀座を歩いて思うのは、一帯を色々な店が埋め尽くし、どこの店も商売として成立していることだ。感心するばかり。
江戸は、世界的な大都市だった。集まった人々が日常生活の中で文化を積み上げ層を成す。食で言えば濃口の醤油から、江戸前の鮨、天婦羅など次々と生まれた。
徳川家が町並みを造り、人々が文化を生み出し、街は賑わっていく。時を同じくして各大名の街づくりが一斉に始まる。江戸時代の初期は、戦国の世も終わり、日本の国が活気に溢れていたに違いない。
その時代に生きていたら君は、何をしていたのだろう?
別れ際になって雨は上がった。灯りのともりだした東京を歩くのが、二人とも好きなんだ。
東北新幹線の「はやて」と「こまち」は、盛岡まで一緒だ。
いつか君は、乗るだろうか?
「はい、ビール」
静かに走り出す新幹線の窓から東京を眺める。
人の動く気配で眼が覚めた。仙台だ。後、40分もすれば盛岡。
次は、どんな夢になるのだろう。もう少しだけ、眠り続けていたかった。
現代の時間は速い。もう、窓に見慣れた夜景が見えて列車は減速し始める。缶ビールの残りと夢を一緒に飲み干した。
ここ、盛岡で「こまち」は、離れる。そういえば、こまちの走る田沢湖線は盛岡と繋がり50年。様々な物語を乗せて来たのだろう。
日帰りの旅は終わった。
盛岡の街は、ほっとする。江戸時代から脈々と続いてきた街づくり。
しかし、駅の辺りは随分、都会的になったものだ。
綺麗で都会的な街も好きだ。
食いしん爺は、北上川をそして中津川を渡り、拡がる古い街並みが、とても好きだ。
気がつけば、二つ目の橋を渡って八幡界隈へ。
さて、今宵の一杯、どこにしようか?