「残念だなぁ~、だいぶ下がってきてたのに、君ぐらいの年齢だとちょっと高いね。まあ、次回まで様子をみましょう。」
先生の話を聞きながら思う。
どうして、こんなに近いんだろ。膝がぶつかりそうだ。じっと目を見て話されると「はい」と子供みたいに頷く。そうか、診察とは、患者の心も診るわけだ。
「では、来月にね。また検査しましょう。」
「はい。ありがとうございました。」
若者の様な元気な返事。振り返れば、深夜に寝て運動もサボり気味だ。6.4まで下がった努力が水の泡と消えた。時間と共に、だんだん滅入ってきた。また、早寝早起き、炭水化物を控えて運動に精を出し、飲み会ではウーロン杯。
「血糖値を下げるには日々、意識すること。」と先生のいつもの顔が浮かんできた。
え~い、今夜は中華だ! 中華料理は火との戦い。肉と野菜をたっぷり食べよう。
「中華、いいね行こう!」
ある人に結果を話し[空」に行こうと誘うと叱られることもなく、簡単に賛同されて拍子抜け。
前々から行きたいと思っていた店、「空」へ向かった。
くらげの酢の物から。
「はい、なるべく野菜から食べなさい!それからゆっくり食べましょ。」
「はい!」
さては、「空」に惹かれていたね。でも、美味しい食事がこじれない様に黙っていよう。
「始めは、胡瓜、トマトを食べてからね。」
「はい。」
子供の様な、いい返事。心の中の思いが全て口から出ていくとは限らない。
晩秋が皿を飾る。憎いね。
酢豚。肉は勿論ジューシーで玉葱が甘く、シャリっと美味しい。こんな人になれたらなあ。
食いしん爺の大好きな、「おこげ」だ。美味しい。
どうして好きなのかは、分からない。
「おこげ」という響きが好きだ。
続いて、あんかけチャーハン。この店の代表作の一つ。
この、「福建風あんかけ炒飯」は、ボリュームがある。高級食材を使ったものから、手ごろなランチメニューまで幅広い。
食べるは食べる。
野菜たっぷり。どうだ、血糖値!
ところでこの店は、「風がなくても凧は上がる。自分の足で走ればいい。」がモットー。まず、自分から動くという精神で料理し、提供するということ。
中華料理と言えば、四川、広東、上海、北京と言われているけれど、本来は8系統にも分類されるらしい。中国では、客が食べ切ると「まだ、足りないのか?」と思われるので、これでもかとテーブルに載せる。残していいマナーが存在する。
「環境に悪い」と思いきや、お持ち帰りの文化があるらしい。一度、中国に行ってみたいものだ。広大で人が溢れている国だ。様々な食文化がありそうだ。テーブルを囲んで沢山の料理を前に笑顔で賑わう光景は世界共通。でも、昔、日本では黙って食べる時代があった。食は日常。文化だ。
高校時代の友人達が、実家に遊びに来てご飯になると「地獄の晩餐会の始まりだ。」と笑う。
とにかく母は、次々と料理を出した。満腹でも容赦ない。
「ほらほら、遠慮しないで!もう一口、食べなさいね。」遠慮知らずの彼らも閉口。
「何々君、まだ。食べれるでしょ。若いんだから。はい!」
友人達は、食べ終わるとベルトを緩めて、そっくり返り放心状態の者、横になり眼を閉じる奴。しばらく「食った、食った」の言葉しか出ない。それにしても、あの頃、よく食べた。
シンプルで綺麗でお洒落な店内。
どうして今回の音楽がjazzか? ジャズのかかっている店だからという単純な理由。たまにはいいと思う。シンプルで。
この曲で仲間の若きジャズピアニストへの誘い。
「今度は、中華にしよう!」
中国料理「空」
盛岡にも色々な店があって愉しい街だ。
どうして「空」なのか? 「食う」と思うのは、食いしん爺だけ。次は、店の由来を聞こう。
個室もあってゆっくりできそうだ。