<疲れた心を癒してくれるクラシカルなランチ>

盛岡・公会堂多賀の、落ち着いた時間を、味わう。

 

東京から雑誌の編集をしている忙しい人を呼んだ。繁忙な日常から少し、開放してゆっくりとした時間を楽しませて戻そうと思った。少し、盛岡の街を巡り、ランチの時間。

 

「公会堂多賀」の落ち着いた時間を味わってもらおう。

 

 

ごぼうのスープは、ふわりと香る。素材を知り尽くした人の味。

 

 

 

この空間は、89年の歴史が漂うミュージアム。「急ぐなかれ、たゆむなかれ」新渡戸稲造

 

盛岡の官庁街、内丸の栃の並木は見事だ。車道からみる空は縦長に伸びる。両側の建物は樹々の陰に見え隠れし、よく見えないほどに生い茂っている。

もう、栃の実は、だいぶ落ちてしまっている頃。

 

 

その、真ん中に盛岡の街の歴史を見つめてきた公会堂がある。昭和の初めに建てられ、開業時から「公会堂 多賀」も営業を始めている。89年の歴史。あの新渡戸稲造も帰郷するとブイヤベースから始まる美味しい時間を楽しんでいたという。

 

 

そして、「HASTE NOT REST NOT」という言葉を贈った。

「急ぐなかれ、たゆむなかれ」の言葉は、今も残る。

 

 

 

テーブルに置かれた銀の食器は創業時からのものらしい。

飾る言葉より、見て下さい。

 

 

天使の海老

「たしかニューカレドニアの海老だったかな?」 向かいは、笑顔で「美味しい」と夢中。

 

 

 

デザートも綺麗で美味しそうだ。

 

 

定番のハヤシソースのオムライス。

色々な人が食べたことだろう。なんだろう、安心でクラシカルな美味しさ。

 

 

 

ふと、日比谷公園の松本楼に何度か行った若き日を思い出し、彼女に話してみた。

その日は、真っ赤なタートルのセーターにブルージーンズで背の高い女の人とのデート。テラス席でオムライスのハヤシソースを食べていた。その人は、鰐皮のヒールを履き、ストライプのシャツの胸には、ちょっと動くと音を立てそうなほど飾り物をぶら下がっている。食後に珈琲を飲んでいると天下、国家を論じそうな先生と一団がぞろぞろと入って来た。傍の二つのテーブルに分かれて座り、先生の方に露わに身を乗り出し、顎だけ頷いている。

 

 

食べ終わり、帰ろうと立ち上がると、刺すような嫌な視線が二人の全身に突き刺さる。

すると、雀が飛んで来て隣のテーブルのパンを突いて飛び去った。振り向いた彼女は、鼻で笑って背筋を伸ばし、ゆっくりと出口に向かった。

 

「きっと、背中に届きそうなぐらい長い髪の人ですね?」

「その頃、自分も肩まで届いていた。二人とも長いことになる。」

そんな古い話しをしながらcoffeeを挟んで笑った。

 

 

建物と銀の食器、接客する婦人までが、落ち着いた空間を創り上げている。

ゆっくりとしたランチだった。

 

 

 

階段に並木の栃の枯葉が落ちていた。また、よく似合う。

 

 

 

公会堂の建物の陰に隠れる様に地下に向かう入口がある。

「この、ひっそりと佇む、辺りが盛岡らしいなあ~」

と言いながら階段を上がる。そして、彼女を駅に送る。

「いい時間でした。この街には、派手さはないのですが、ほっとする場所が沢山ありそうですね。今度、また、ゆっくり来ます。」

「Haste not Rest not」と、言いかけたが、止めて軽く手を振った。

 

 

迷う贅沢

確かに、公会堂多賀から歩いて10分ほどの処に盛岡三大麺(蕎麦屋、じゃじゃ麺、盛岡冷麺)はもとより、フランス、イタリア、中華料理店などが沢山ある。それに個性的で素敵なカフェがある。頭に浮かぶ店を指折り数えた。すぐに十指をこえる。

さて、盛岡の昼下がり。

ちょっと歩いて、もう一杯のcoffeeを飲みに行こう。

さて、どこにしようか? 迷うなあ~