aurora coffee roasters
<オーロラ珈琲の小さくて大きな世界>
夢は、その気があれば、どんな小さな場所からでも始めれる!
10月の半ば、雫石の御明神の方まで珈琲を飲みに行った。
小さなカフェ。片隅に、大きいパソコンケースの様な物が置いてあり、中にはアコーディオンが入っていた。ピアノを弾くというマスターが思い切って買ったもののなかなか難しいらしい。
とても小さなカフェを拡げるマスターの夢。カップや装飾品も北欧。一度、味わうと病みつき
になった食いしん爺の「オーロラ珈琲roaster」
前から気になっていた小屋は、コンテナハウスの小さなカフェ。
珈琲は、個性的。フルーティでとても美味しい。
日常に埋もれていた事が、ふとした時に蘇り、無性に行きたくなる事がある。今から一年以上も前の田沢湖からの帰り道。国道から分かれて雫石の街に繋がる道を通った。静かな集落をゆっくり走っていると白い洒落た小さな建物を見つけた。「?」車を止めようかと迷ったが、そのまま通り過ぎた。時々、思い出していた。「あれは、カフェだったのか?何だろう?」
10月の休日、出かける約束の迎えの途中。信号待ちの間に、ふと、片隅に潜んでいた謎の小屋が浮かんできた。
助手席に乗せると「行く先は決めてある。」とだけ言い、西へ走った。
「今日は、小岩井方面なの?」 首を横に振り、鶯宿温泉に向かう道から、御明神という集落に入った。盛岡から来ると郵便局を過ぎて右側。
「えっ、ここは、なに?」 と予想通りのリアクションが嬉しい。看板も見当たらない。庭の片隅に洒落た白い小屋。人が駆けより車を誘導すると小屋に入り、ドアを開けて、
「良かったら、どうぞ。」
期待と少しの緊張を抱えて入る。旅は道連れとは、いいものだ。入口のドアに小さな看板がぶら下がっていた。
ドアを開けてびっくり! 小さな空間に、拡がる世界。
ガラス細工が色々な形で並び、窓には、ガラス玉の雨粒。
ぐるりと見回しながら、「美味しい」の予感。
小さな椅子に座り、マスターの丁寧な説明を聞きながら珈琲を選ぶ。
淡々と珈琲を語る彼の心から情熱がどんどん溢れてくる。
数ある中からグァテマラにした。香る珈琲、確かに酸味が心地よい。美味しい。大ぶりのカップだと思っていたが、気がつくと七分目ほど飲んでしまっている。
「するすると飲んでしまう。」 訪れる人の多くが同じことを言うらしい。
珈琲に合わせたスイーツも手作りだ。
「美味しい。よく珈琲に合うね。」 と彼女の笑顔。
ラテのミルクは、近くの農場の牛乳を自分で低温殺菌。こだわりは、美味しさの必要条件。「ハートです。まだ、へたくそですいません。」
自信の牛乳は、とてもコクがあるのに後味が良い。とても美味しい。
「このミルクを飲みに来る人もいまして。」とマスターは苦笑い。
夢は粗削りでもいいじゃないか?
成年、マスターは、言う。
「珈琲には酸味が大切だと思います。しかもフルーティーな飲み物だと思います。」
一口飲むと、今まで知らなかった珈琲の世界が広がった。新しい美味しさだと思う。
いい仕事人の背中は、どこか凛として見ていて心地良い。どうしても珈琲を突き詰めたくて親には申し訳なく思いながら、デザインの学校を止めてしまった。
東日本大震災の時の影響もあり、実家に帰って来た。1、2年、彼の夢の実現は、遅れて始まった。いずれ、どこかで珈琲店を出したいという。珈琲roaster。生の豆を焙煎して珈琲好きに届けたい。マスターの背中は、まだ粗削りな夢に向かっている。
食器は、フィンランドのアラビア。
オーロラの理由?
「どうしてオーロラなの、北欧系が好きなんですか?」
と彼女が聞く、
「北欧をイメージしやすいのは、オーロラ。分かりやすい名前にしました。」
「なるほどね。でも、中にいると、コンテナハウスとは思えない。」
と頷きながら立ち上がり、棚の珈琲の豆を見に行く。
マスターに、また来ることを告げ、珈琲豆を挽いてもらい、オーロラを後にした。
「やりたいと思ったら、手作りの小さな世界からでも始めることができる。狭くても広げられる。そういうことね。目の前に突きつけられた気がする。」
と帰り道の助手席の眼は、キラリ。
彼女を送って部屋に戻り、早速、珈琲を淹れる。
珈琲の粒子が細かく泡立って水平のまま、窪まずに、ゆっくりと滴が落ちる。淹れたてを飲みながら、今日を振り返る。
人は、人と出逢い、エネルギーを貰う。 彼女は、何かを充電した様だ。淹れた珈琲が冷めかけていたが、これも、また喉に心地良い。
秋の夜長。もう少し頑張ることにしよう。