深夜になっても日中の色々なでき事が、頭の中を駆け巡る。蒸し暑さのせいもあり、何度も寝返りを打つ。明日の朝が早い時には、悶々としながら、目を開けまいとする。しかし、ついに時計を見てしまう。4時近い。諦めて起きる。ミルクを飲みながら煙草の煙と溜息を吐き出す。
あれ、気づくと傍らに我が家の猫がそっくり返って爺を見ている。ひょっとして付き合ってくれているのか?と思ってしまう。抱っこして耳の辺りを撫でる。微笑んでいる自分が優しい人間になった様なきがする。
しばらくして、カーテンの隙間から空が白んできているのが見え、ようやく睡魔が襲って来た。寝不足の明日一日を覚悟しながら眠った。
そうかと思えば、好奇心旺盛で目は離せないが見ていて楽しい。見たことのない物には、しつこく食いつく。
苔玉への好奇心は凄かった。
たいてい、こんなふうに、眠れない夜は傍に来てくれることも。
帰宅して着替えると隠れたつもりでネクタイを襲う。
毎日、とにかくあちこちを登る。チビの頃は、人間と同じで目を離せなかった。
新しい物は、普段と違う物に映るのだろうか?
全速力で駆け巡る時も、壁を蹴って横っ飛びする時も一生懸命。
走りつかれると、ごろり。何せ、この「もふもふ」を着ているのだ。今の季節は、かなり暑いはずだ。
爺は、アメショウ君の太い尻尾が大好きだ。
猫の怒りの「シャアー」という鳴き声を聞いたことが無い。二度ほど犬の様に唸り声を上げたことはあるのだが。
たまに、お出かけすると「にゃあ~、にゃあ」と心細い声で鳴く。でも、車の中もすぐになれて見たことのない世界を観察し始める。
そして、眠っている時も可愛いものだ。
こっそり撮った肉球。
小さい頃は、毎日「にゃあ~ん」とイイ声で小さなベッドに入って来たが、近頃は、あちこちで寝ている。先日、深夜に爺が、床に入ると一緒にトコトコと並んで歩き、隣の小さなベッドに入った。
敷き詰めた厚手のタオルをかじり吸う。勿論、ゴロゴロと喉を鳴らしながら前脚を手の様にして器用に「ふみふみ」して形を整える。上手に、突起物を作っていく。
そして「ちゅばちゅば」と前足で抑えながら、真面目な顔で吸いまくる。しばらく待ってから、耳の外側を撫でると、そこだけ真っ白な顎を上げて来る。
心が歪んでいる夜にアメショウ君を見ているだけで救われる。
日本では、猫派が一番多くなったらしい。確かに犬と違って散歩もいらないし、泊まりに行き留守を預けても大丈夫だ。
爺も、紛れもない猫派になった。
近頃多いのが、脚に擦り寄り、耳の横や背中を撫でると頭を床に着け背中をぐるりと回転すること。前転を数回することもある。
しかし、時折見せる野生の顔。猫の本来の狩りの遊びは、真剣そのものだ。できることなら小岩井農場の大草原や森の中を思いきり走らせてみたいものだ。
でも、戻って来るだろうか?
草原の草を分け、森の中に飛び跳ねて行ってしまう様なきがする。アニメで見た狼の様に、せいぜいチラリと爺を振り返るぐらいはして欲しい。
いやいや、アメショウ君には、まだまだ傍にいて欲しい。森の中に走って行ってしまっては困るのだ。もう、彼と一緒に生活するのが当たり前になっている。とても大切な家族だ。
数か月前は、凛々しい顔をしても、まだ全身に幼さが残っていた。
高いところに登っても、不安げだった。
半年前の写真と比べると今は、だいぶ成長した顔になっている。
アメショウ君は、赤ん坊になったり、成年の顔を見せたりと色々な顔を見せる。猫アレルギーでも猫好きの人が、「猫を飼いたい」と子供の様に話していた。その人も、幼児と少女と老成した様な大人が同居している人だった。でも、野生の顔は見たことが無かったが、想像するだけで暑さを忘れる。
さあ、アメショウ君、今夜は、ゆっくり撫でてあげます。