「盛岡さんさ踊り」を皮切りに、東北は各地で続々と「熱い夏の祭り」が始まる。暑い、熱いときたら、ビールだ。久し振りに「BAEREN」のビールが恋しくなった。
どうせなら、北山のベアレン醸造所に行こうということに。思えば、いつもビアレストランなどで呑んでいて、醸造所の前は、よく通る場所だが行ったことがない。
助手席の大のビール好きが、入るやいなや、露骨に喉を鳴らしているのでつい、
「一本呑んでみたら?」
と言ってしまった。
「いいんですか! 悪いですね」
というものの、しっかり栓抜きを握っていた。
2階に上がって、ほどよく冷えたビールの栓を抜く。流石に、美味しそうなものを見つけるのが素早い人だ。
夏限定の「夏のヴァイツェン」
1994年の酒税法改正で製造量の基準が緩和され、小中規模の製造量でも生産が可能になった。どうして、それまで大量じゃないと許可されなかったのだろう?
とにかく全国各地で地ビールの生産が始まった。しかし、観光のお土産的なビールとしてトレンドとなったたが、あっという間にブームは去り、3分の1に減ったらしい。
結局、味にこだわり、ビアレストランなどで美味しいソーセージなどと合うものが残り、ビール党も色々な味を楽しんでいる。
盛岡のベアレンビールは、「ベアレン・クラシック」と「シュバルツ」という創業時からの評判もよ良く、イベントなども開催しながら地道にファンを増やしてきた。直営のレストランを始めてクラフトビールと呼ばれる時代に3店舗のそれぞれの美味しい料理とビールの組み合わせが好評を呼んでいる。
美味しそうなもビールが勢ぞろい。
結局、増えて呑んだ外に4本に。
これが、ビールの元。初めて見た。
ドイツの小さな醸造所の「仕込の場」をそのまま移設した。この銅の釜は100年前のもの。
「部屋の中は、暑いんでしょうね?」
と聞くと、
「40度は超えます。」
と苦笑いしていた。なるほど外の方が涼しいわけだ。
この銅の釜を見ているだけで、本来のコクのある美味しいビールの予感がする。
ベアレンでは、盛岡に3店舗の直営レストランがある。
どこも、常連客で賑わっている。毎日の様に通うベアレンファンを何人も知っている。
ビアレストランといえば、ソーセージやハムだ。
盛岡から1時間半ほど北の一戸町の奥中山高原に日本に10人ほどしかいない食肉加工のマイスターがいる。ドイツに単身乗り込んで5年半。ドイツの国家資格を取り帰国した。
言葉もゼロからで、それでも働きながら学んだそうだ。一度、取材で訪ねたことがある。豚を自分で飼い、当時は加工場を借りてソーセージやハムを造っていた。お母さんの手料理でたっぷりと、もてなしてもらったことを思い出した。
農業の6次化が叫ばれる前からの実践だった。その時、盛岡のベアレンに出していると聞いたのだ。ドイツの伝統が活きた、しっかりとした肉の味。美味しいソーセージだ。この料理と
ビールの本場、ドイツでも珍しくなった古い銅の釜を大切に使ってのど越しだけではなく、コクと苦味のバランスの美味しいビールを追求しているビールだ。
ベアレンの想いは、食卓をちょっと贅沢に豊かに、幸せにすることだ。食いしん爺は、盛岡のブランドだと頷く。
レンガ造りの建物の中に、古い銅の釜。美味しいの予感だ。
ベアレンのスタッフも爽やかな笑顔で心地良い。
若い人達が自分達の「味」に確信を持ち、そこに留まらず、さらに上を目指していく。沢山の支持してくれる人達と共に。
さてと、テーブルに並べて夕食をちょっと贅沢にしよう。あれっ! ベアレンがない。
「あなたは、血糖値が高いんでしょ? 仕方ないわね~」
と、何やらほくそ笑んでいた助手席の横顔を思い出した。
爺の食卓は、少し暗くなったが、盛岡の食文化の未来は、明るい。
とりあえず、規則正しい生活をして「食」を愉しめるようにしなくては。「食」は、人生の偏差値を大きく左右する。
明日は、こっそり、ベアレンビールとソーセージを食べに行くとしよう。(笑)