七月も中旬。

立葵も頂点で花が咲き、いよいよ夏本番。

盛岡の街では、さんさ踊りの太鼓の稽古の音があちこちから響く。八幡界隈の真夏のイベント「大縁日」も始まり、北上川のゴムボート下りや花火へと夏のイベントが続く。

 

暑い日差しの中、川目の方での用事が終わり、夕暮れ時の帰り道。

助手席から、

「岩山、通って帰りませんか?」

なるほど、ちょうど日も傾き、いい具合に暮れかかっている。

国道から岩山の展望台の方に曲がった。

 

駐車場からちょっと歩いて奥の展望台に登る。3、4階ほどあるかもしれない。若かったころは、ピョピョンと跳ねる様に駆け上がったものだ。と語る時点で老いている。

息が切れる。

 

「あれっ、鍵のかかった錠ですよ」

 

 

 

 

そもそも展望台は、UFOみたいな形だ。

円形の展望台の手摺に「錠」が、沢山ある。

 

 

 

 

 

展望台の手摺の鍵。

恋に酔いし知れるカップルがお互いををロックする。でも、なかなか人の「心」は、ロックできない。この、錠をかけた時、恋の頂点にいる2人なのか、どちらかの不安からの束縛の願いのなのか分からない。でも、錆てる。

さて、恋は、成就したのか、儚さの錆なのか?

誰か鍵を持って戻り、外した人はいるのかなぁ~?

とにかく、錆びた「恋の証」なのだ。

しばらく、絡み合う錠の数々を見ていた。

 

 

 

 

夕景から夜景になってきた。

「夏至をすぎると、一日いちにち日が短くなってく、淋しいなあ。」

夕焼けを見ながら、この季節になると毎年の様言う人がいた。

 

写真が上手く撮れない。

夜景は、スマホでは難しい~(いいわけがましい~)

北から南へと視界一杯に光の河が続く。岩山で見る夕景、夜景は、百万ドルとはいかなくても、とても綺麗だ。

 

 

 

「わぁ、綺麗」

と歓声を上げて手摺に駈け寄るカップルが、左から右へと首を動かす。

そして、必ずといっていいほどどちらかが、ある方向に腕を伸ばす。

 

それにしても、この等間隔はなんだろう?

カップルごとに二人の距離が微妙に違う。

 

 

 

 

「あれ、時間ですよ!」

それを合図に急いで降りた。

 

そうだ、上田の「むら八」本店にカツサンドを取りに行く時間だ。

 

 

 

出来立てのまだ温かいカツサンドを想像して向かう。

 

到着したのは、9時ちかく。いつも混雑している店の中が空いていた。

「この時間だと、流石に空いてますね」

「せっかくだトンカツ、食べようか!」

カツサンドのテイクアウトのはずが。

 

胡麻を擦り。

 

 

来た来た!上ロースのトンカツ。

美味い!

 

 

一人は、和風。二人は、笑顔。

 

 

お代わり自由のたっぷりのキャベツが嬉しい。

 

 

 

 

「やっぱり、旨いですね。カツサンドどうします?」

「明日の朝食べる。冷めても美味しいからね~」

「なるほど、私もそうします。」

キャベツとみそ汁をお代わりしてカツサンドをそれぞれ持って帰る。

美味しさ、満腹で幸せだ。

 

あの、錠を思い出した。

2人の恋が儚く、幻になろうと「錠」は、風雨に晒され雪に埋もれ、灼熱の太陽を浴びても屈強に鉄柵に絡まっている。しっかりとした「錆びた恋の証」となっていた。

少し不気味さを感じた。あまり恋には形のない方がいいのかもしれない。

 

盛岡の夜は、更けていく。

そして明日の夜は、今日より、ちょっと長くなる。