5月の半ば過ぎ、北へ走った。
北上川の源流に行ってみようと思い立ったのだ。きっかけは、仕事で色々と調べ物をして
いた時、盛岡の歴史にとても詳しく膨大な資料を持っている歴史家の山田さんを訪ねた。
余談になって、
「ところで、北上川上流が出身の怪獣がいたことをご存知ですか?」
ときた。
なんと北上川の上流に棲息していた怪獣がいたのだ。映画の中で怪しい地図が出てくる
が、岩手なのか秋田県なのかはよく分からない。映画だからデフォルメされ、それはそれ
で面白かった。
北上川の上流の深い山中に断崖絶壁に囲まれた深い湖があったのだ。
勿論フィクションだ。国道4号線沿いに、源流へ向かう小さな看板を何度か見たことがあ
り、なんとなく気になっていたのだ。この際、北上川の源流を訪ねてみようと思ったのだ。
その「大怪獣バラン」がこれだ!
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国道4号線を北に走っていると暑い。まだ5月の半ばだとういうのに、気温が30度ちかく
まで上がっている。みちのくの過ごしやすい新緑の頃はどこへ行ったのか?
厨川の跨線橋を過ぎて「おや?」 光景が違う。
道路が拡張、整備され、林が分離帯になり、4車線になっていた。盛岡に隣接する滝沢市
の辺りは宅地開発が進み渋滞気味だった。
ところが、道路は、広々としている。思わず車を止めた。
しばらく来ないうちに景色が変わっている。
<整備され片側だけでこのとおり>
玉山に入ってもバイパスが延伸されて、スイスイと走る。
岩手町に差し掛かり、川口から旧道に入いった。
園井恵子さんの像で一息。
ここも看板を見て気になっていた場所だ。
園囲 恵子さんを詳しくは知らないが、宝塚出身で映画女優となり、大ヒットした「無法松
の一生」に出演し、その後、劇団に入る。次の映画の話が本人に伝わる前に、その劇団
は、巡業に旅立ってしまっていた。
そして広島で被爆した。
爆心地から近かった様だ。爆風に飛ばされながらも殆ど無傷だったものの、しだいに髪
が抜けだし、しだいに高熱、皮下出血など被爆の影響による障害が出始め、ひと月も生
きることができなかった。生き残った劇団の仲間も同じ様に次々と亡くなった。
冷やしたガーゼを当ててもらい
「気持ちいいわ」
と言ったのが最後の言葉だったという。
源流のドライブに行ってしばらくして、オバマアメリカ大統領が広島を訪問の報道が流れ
たが、その時、園囲さんの話と像を思い出した。
園囲さんの像は、綺麗な花に囲まれ、田園の向こうに岩手山が霞んで見えた。
青空を背景に、何を見ているのだろう。
さて、道の駅「石神の丘」でランチ。地元の蕎麦を「茶屋っこ」で食べる。
すぐ溶けてしまいそうな十割蕎麦。食いしん爺は、こういう蕎麦も食いしん爺は、好きだ。
美味い。
ここの道の駅には、石神の丘美術館がある。その日は休館日だったが、レストランなど
や産直もあり、いつも賑わっている。
美術館のある道の駅は、ここ以外に、爺は聞いたことがない。
さて、岩手町の街を過ぎ、しばらく行くと看板があり右の脇道へ。曲がりくねった細い道を
行くのかと想像していたが、整備された道路だった。
そして意外なことに、少し走ると源流に着いた。駐車場も整備され綺麗な浸水公園の様
になっている。もっと曲がりくねった道を覚悟していた。
しかし、道路を渡り、門をくぐると雰囲気が一変した。
神社の中に入って行く。
「アッ!バラン」かと思った。背中も似ている。
鐘楼もある。
うっそうとした森の中だ。
空気がひんやりして静まりかえっている。
空が狭い。
石段を登りきると、また別の狛犬がお守りしている。
後ろ姿も、どうしてもバランを連想してしまう。
なんと、北上川の源流は大きな樹の根っこにあった。
源泉「ゆはずの泉」
源流の水は、いったん池に溜まる。
絶え間なく滴が落ちる。
これが、岩手から仙台平野を悠然と流れる大河「北上川」の源流。
帰り道は、やはり流れを辿りながら走る。
国道4号線と合流する辺りでは、まだまだ、あちこちで見かける小さな川だ。
岩手町の街まで来ると川らしくなってくる。綺麗な川だ。
岩手町といえば「東雲」
戦後、苦心して材料不足のなかで貴重な素材を活かし作られた銘菓。
クルミが夜明けの雲で胡麻が飛ぶ鳥を表し、「平和への願い」が込められている。
玉山の方まで南下してくる。
水を張り、田植えの終わった田圃に映る逆さ岩手山。
北上川は、どんどん大きくなり、四十四田ダムでいったん大きな湖になる。
今の時期に、こんなに水を満々とたたえた姿は初めて見た。
今年の山の雪は少なかったが、この続いている暑さで溶けてしまったのかもしれない。
バランが水中から顔を出してもおかしくない雰囲気だ。
大怪獣バランは、山奥の湖に潜んでいたが、先に手を出したのは人間だった。湖から化
学薬剤で誘い出し、戦いで山火事が起こり、ちょっと大丈夫かなと思う様な羽で空に飛び
立ってしまう。
その後、東京湾に現れ、羽田で暴れるがついには、「特殊火薬」を食べて爆発。海に逃れ
るが、もう一発が爆発。
バランは、羽田沖に謎と共に沈んだ。
ゴジラが1954年、「大怪獣バラン」が1958年。
盛岡まで来ると、もう大河「北上川」だ。
数々の川を集め、流れには迫力がある。早い雪解けのせいもあるのか、この時期にして
は水量が多い。確かに、今年は四月の下旬の陽気で岩手山の雪も早々に消えた。
八甲田山の雪も連休前に消え、恒例の春スキーに行けなかった。
福島の原発の問題や異常気象など本当に地球は、大丈夫なのだろうか?
たしかゴジラも放射能の影響があったのではなかったか?
どこからかともなく「大怪獣バラン」の雄叫びが聞こえてきそうだ。
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