三月の下旬。
「SAОB(サボ)」でランチをすることに。
「こんにちは、今日で盛岡、最後の日になるこの人がね、サボに一度、行ってみたいっていうので
連れて来ました」
「はい、どうしても一度来てみたかったんです」
と彼女が続く。
「エー、そうなんですか? 最初で最後ですか~残念です!」
と本当に残念そうだ。
三年盛岡で働いたエイミーちゃんは、「カフェ・レストラン SABО(サボ)」を半年
ぐらい前から知っていて、行ってみたいと言っていたのだ。
マスターは、厨房に戻った。今日は、腕によりをかけるかな?いやいや、いつも「サボ」
らないマスターだ。いつもと同じ。(笑)
盛岡を離れる、エイミーちゃんが、メニューをジィーと見つめている間に、綺麗なミニサラダが登場!
赤紫は、たしか珍しい色と味の大根かな?
春らしいなあ~ 「食」を通じて、ちょっとした感動をいつも、マスターからいただく。
「ミニサラダは、ランチの時は、ついてます」
そうなんだ。まてよ、よくよく考えると、爺は、ランチタイムは初めてだ。
この木のテーブルに料理が並ぶのが、待ち遠しい~
エイミーちゃんは、念願のサボだけに、慎重に選んでる。
沢山メニューは無いけれど、何せ最初で最後。
「どうですか、サボは?」と聞いてみた。
「なんでしよ、手作り感溢れてますね~、盛岡に3年もいたのに、もっとあちこち行ってみれば
よかったなあ~」としみじみ話す。
盛岡の良さを伝えてくれればいいし、何かの機会に盛岡に寄り道してくれればいいのです。
「マスターの思いが、食べた人に伝わる。そんな感じが店の雰囲気に出ているなあ~」
エイミーちゃんも、きちっと言う様になりました。苦労に無駄はない。しっかり成長しています。
そうこうしていると、焼きあがりました!
「マルゲリータ」登場!
モチモチ感が目に飛び込んでくる!
トマトソース大好きのエイミーちゃんは、小さい体ながら、パクパクとよく食べます。
「美味しい!」
と時々、小さな歓声をあげます。
「皮がモチモチして、ホントに美味しいです」
今日も幸福そうな顔のお客さんです。
そして、パスタ!「ポモド―ロ」 パルミジャー仕上げ!
「トマト好きには、たまらないです~」と、またまた顔がほころんでいる。
彼女は、どんどん食べます。
爺は、いつもの。ちょっとニンニクがきいた「マリナーラ」 何度食べても旨いんですね~
時々、向かいのトマト好きの視線を感じます。(笑)
爺は、近頃、ピザの耳の残しておいてソースを浸してペロリと食べるのです。これが旨い!
珈琲は、砂時計が落ちるまで待ちます。
いつも、満足した気分でゆっくりと~
素材は、自分の眼で確かめる。近郊の農家を訪れては仕入れます。
マスターの根底にあるものは、
「食」の大切さだと爺は、思っている。
店は、自分の納得した、気に入ったものでデザインされ、オブジェも自分の好きなもので
妥協しないで集めては、みせの雰囲気を創る。
実は、しっかり計算してスタイリングされている様な気がする。でも、彼は、それを感じさせない
ように気を配っているのではないか?
多分、彼の生活、すべてが「素材を作る人」と「食べる人」をコーディネイトすることに繋がって
いるのではないか。そして、人に身体に優しいものを次々とテーブルに並べながら、お客さん
にも「食」を楽しんで「食を考えてもらいたい」のでは?
爺の勝手な想像です。
「これ、アメリカの耐熱のガラスで・・・・・えーと、そうそう、ファイヤーキングでビンテージ
もので、50年ものが殆どらしいよ」とマスターの代わりに説明しておいた。
カップの底のバックスタンプで年代が分かるらしい。
「どうして、この店を始めたんでしょうかね?」とエイミーちゃん。
お爺さんから父へ、そしてマスターまで代々、同じような仕事についてはダメな家訓の家
らしくてね、彼は「食」を考えたらしいと説明した。
「え~?」
そうだよね~。きちんと説明しておきます。ピンと伝わっていない。
彼のお父さんが、「食は、記憶だ」っていていたらしい。何かを食べて色々なことを思い出して
くれる様な演出が出来る料理人になれ、と言われたらしいことを伝えた。
「そうなんですか? お父さんは、職人的な板前さんだったんですか?」
お父さんは、全く畑違いの車関係だと言うと彼女は、一瞬、口が開き、すぐ、大きな声で
笑った。
マスターに、送られて、彼女の「盛岡でのランチ」は、終わった。
「ほんとうに来て、良かったです」
彼女の顔は、満足感でいっぱい。ただでさえ、これから幸福な生活が待っているの
ですからね~
ますます眩しい!
「今度は、一緒に盛岡をゆっくり歩いてみたら」
「そうですね、二人で来てみます。落ち着いたら。一、二年後かもしれませんが、私にとって
ゆっくり来てみたい「街」になりました」
マスターに悪いが、爺には、あまり混んで欲しくない場所なのだ(笑)
でも、もう有名な「カフェ レストラン SABО(サボ)」になっているのかもしれない。
(完)