「亀って、かわいい顔をしているね。」

満智子が、微笑んだ。

「君の方が…」

「……?」

「あ、うん。そうだね。亀はかわいいね。」

「そうだよねー」

耕と満智子は水槽の前で仲良く話していた。

「さっきから耕くんはあぶなっかしいなあ」

そのようすを優介は静かに見守っていた。



一方その頃、職員室にて
「なんで、ですか!!」

「いや…なんでって言われても…」

「ふつうは熱帯魚じゃないんですか?クラスに置く生き物の定番は熱帯魚でしょうが!」

祐司が竹田先生に必死に抗議していた。

「祐司…亀も良いもんだぞ。」

竹田先生は生徒を下の名前で呼ぶのだ。

さすがの竹田先生もこの熱心な熱帯魚オタクには、太刀打ちできなかった。

「いやいや、熱帯魚の良さがわからないのかなあ~」

「そんなに、熱帯魚が好きなら家で飼えばいいだろう」

「既に飼ってます!」

「………」

「じゃあ…せめて何で亀にしたのか教えてくださいよ」

「……わかったよ。いずれは話すから教えるよ。実は…この亀は…」

「竹田先生!あの、このプリント…」

竹田先生の話の途中で他の先生に遮られてしまった。

「悪い祐司、また今度な。」

「え…あ、はい。」

そうすると、竹田先生は声をかけた先生と共に職員室を出ていった。

「めっちゃ気になるんだけど…」

祐司は一人寂しく、竹田先生の机の前で立っていた。仕方なく、動こうとした時に竹田先生の机の上にあったひとつの写真が目についた。

「誰だろう…」

写真では4歳くらいの男の子が満面の笑顔でピースサインをしていた。









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「いや~楽しいね。気分が良いと青空も一段と綺麗に感じるね。」

「そうだな。それにしても耕君、今日はいつもより元気だね。」

優介がのんびりとそんなことを話していると前方には祐司と健太が待っていた。

「おはよう!祐司!」

「おはよう!耕!今日は元気だな!」

「そうかい?いや~そう思う?」

「何か良いことでもあったの?」

「いや、良いことがありそうなだけだ。」

「なんだそりゃ!」
四人は笑いながら、いつもの通学路を歩き始めた。朝の新鮮な空気が今日も気持ち良かった。



初めてのミッションを終えてから3週間が過ぎていた。村の木も緑に色づいていた。皆さんが気にしていると思われる健太の兄、涼野はあれから宣言通りに野球部を作ろうと必死に人を集めている。この先、涼野が野球部を作る事ができたのか否かは少し後の話にしたいと思う。

話は変わる。
いつものように
朝、6ー1の皆が教室に行くと教室に少し大きな水槽があった。中には、亀が入っていた。

「なんだこれ?誰かのイタズラか?」

「どうせ、祐司だろ?あいつ、熱帯魚好きだもんな。」

「でも、亀って魚なのかしら?」

「え?魚じゃない?」

「どっちでもいいだろ。」

クラスの皆が、そんなことを話しているとは知らずに祐司、耕、優介、健太は教室に入った。

「諸君、おはよう!今日も空がきれいだ…」
そこまで言うと、耕の言葉は遮られた。

「おお!祐司!やっと来たか!」

「ん?どうしたの?」

「お前、いつの間にか亀を連れてきたのか。」

「え?亀?亀ってなに?」

「とぼけるなよな~、じゃあ、この水槽の亀はなんなんだよ?」

祐司が水槽を見ると不思議な顔をして皆を見た。

「え?僕じゃないよ?」

「………」
クラスは騒がしくなった。

「祐司じゃなければ誰だよ。」

「竹田先生に怒られそうじやない? 勝手に亀なんて連れてきて」

そんななか、教室の前の扉が開いた。
竹田先生だ。

「ほら、静かにー。HR始めるぞー」

と同時にチャイムが鳴り、皆はしぶしぶ自分の席についた。

竹田先生は皆が席についたのを見届けると、目の前にある水槽を見つめた。

「えーっと、おはよう。」

「おはようございます。」

竹田先生は少し戸惑ってから、口を開いた。
「今日から、このクラスで亀を飼う。」

「え…、もしかしてこの亀って竹田先生が…」

「ああ、そうだよ。」

犯人が意外な人物だったので皆は驚いていた。

「でも、なんでいきなり亀なんて。」

「いや、何て言うか…生き物係りの仕事がないだろ?だからさ。」

竹田先生は耕の方へ顔を向けた。

「先生…」

耕は立ち上がった。

「先生はなんて優しい方なんでしょう!僕は仕事がしたくてしたくてたまらなかったんですよ。」

耕があまりにも情熱を込めて語るので皆、引いていた。

「耕…」

事情を知る、祐司達は少しばかり呆れていた。

耕の席から斜め前に居る一人の女子はうしろを向き、耕に目を輝かせて言った。

「耕君は…仕事熱心なんだね!!」

その女子こそ満智子であった。

耕は笑顔で応えた。
「いや~それほどでも。」

耕の情熱の源が下心から来ていることを満智子ちゃんが知ったら悲しむだろうなと、祐司は満智子を気の毒に思った。











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数時間前…

祐司は雄平から野球部が町南中には無い事を聞き、何故野球部が無いのか調べてみることにした。朝早くに起きた祐司は耕と優介と健太も誘い、まちへと急いだ。何も宛があるわけではなかったが、先ずは町南中へと歩みを進めた。
町には、既に人の往来が激しかった。
「町に来る機会がこのごろは多いね。」
「ああ、なんか俺達本当にちゃんとミッションをこなしている感じだよな。」
優介と耕がのんびりとそんな事を話していると、町南中学校の校門前に着いた。休日ではあるものの、部活の為にたくさんの生徒が校舎に入って行った。
「…着いたな。さてさて、どうしたものかね…」
四人が校門の前をうろうろとしていたら、校門を少し中へ入った所に居た警備員のおじさんが声をかけてきた。
「どうしたね、君達?」
「あ…アノォ…聞きたい事がありまして…」
祐司が答えた。
「なんだい?道にでも迷ったか?それとも、恋の相談かい?ハハハんな訳ないか!」
「あ…じゃあ、俺は恋の相談でもしようかな♪」
「耕くん…」
優介が呆れていると祐司が再び声を出した。
「実は…この学校の野球部について知りたくて…町南中には野球部が無いんですよね?」
「野球部の話か…まあ、ちょっとこっちに来てゆっくり話そう」
おじさんは野球部の単語を聞くと寂しそうに微笑んだ。四人は警備員の小さな小屋の警備室に入った。おじさんは今、担当の時間ではないので警備服の帽子を取り、四人と同様パイプ椅子に腰をかけた。
「君達は…中学生ではないみたいだね?」
「はい。小学6年生です。」
「野球部に入ろうとしているのかね?」
「いえ…そういう訳ではないのですが」
「まぁ、詳しい事情は聞かない事にしよう。野球部が何故無いのか…だったね?」
「はい。」
「実はね、町南中にも5年前までは野球部があったんだよ。ずーっと昔には黄金期ってのもあってすごく強い時代もあったんだよ。…でも、5年前のちょっとした事件があって、廃部になっちまった。」
「廃部…」
「その事件というのは、生徒達の暴力事件だったんだ。野球部にはたくさんのならず者が居てね…バット振り回し、たくさんの生徒達を傷つけてしまった。それも、大人の知らないところで…。それは一部の野球部員だけじゃなかった。始めは、暴力なんてするつもりはなかった人も強要されて、野球部員全員が手に負えなくなってしまった。中には辞める者もいたが、辞める事もできない人も居た。
さすがに野球部員の彼らも大怪我を負わせる程の暴力はしていなかったんだ。でも、暴力は暴力…町に野球部の悪い噂は広がっていった。
ある日…遂に野球部員の中に暴力に反対する者達が現れた。それは凄まじい乱闘を引き起こした。そして、何人者生徒が大怪我をした。当然、野球部は廃部になった…。確かに悪い生徒はたくさん居た。でも、そんな大きな事件になる前に大人の私達は何故きづいてやれなかったんだ…その事だけが悔やまれる…どうして、早く彼らを引き戻してやれなかったんだ!!」
おじさんは頭を抱えて、自分を責めているようだった。
「でも…何で、今も廃部になっているのでしょうか?世代は変わってるのに。」
「先入観とは怖いものだ。そんな、事件があったきり町南中の野球部に入ろうとするものは居なくなったよ。今もその名残から、野球部は町南中には無い。それと、ほとんどの人は事件を知らないか忘れているが、町南中に野球部が無いのは当然の事で別に気にも止めて無いんだろう。」
「そうだったんだ。」
「おおっと、そろそろ任務に戻ろうか…じゃあ、また今度なぼうやたち。」
おじさんが立ち上がると四人はお辞儀した。
「有り難う御座いました。」

…現在
「野球部は廃部になって今は無いから、野球部には入りたくても入れない…ですよね?」
祐司は涼野に聞いた。
「…ああ。そうだよ。でも、俺は…」
そこまで話すと耕は遮った。
「だって…じゃないですよ!野球部に入りたければ、町北中に編入すれば良いじゃないですか!」
涼野はそれを聞くと静かに話を始めた。
「それも考えたんだがな…母さんの事を考えると無理だよ。」
「母さん…?」
「今回の引っ越しは父さんの仕事の都合が理由で来たんだけど、父さんこっちに来てから忙しくてなかなか帰らないんだ。その上、母さんも仕事しててさネットを使った仕事だから場所は関係なく前からの仕事続けてて…前より忙しくて…。編入なんて母さんには悪いよ。」
「そうだったんだ。」
祐司と耕と雄平は顔を曇らせたが、健太は違った。
「兄ちゃん!嘘つくな!」
「健太…どうした?」
耕が驚いている事は無視して続けた。
「兄ちゃん、本当は怖いんだろ?中学で野球がちゃんとできるか不安なんだろ?」
「…健太」
「前に兄ちゃんが言ってたの思い出した。兄ちゃんはプロを目指してるけど、なかなか自分の実力と夢の、ギャップに焦ってた。だから、野球も楽しくないって…だから、野球に真正面で向き合えないって。でも、兄ちゃん…野球好きなんでしょ?今日の兄ちゃん見ててわかったよ。兄ちゃんは野球を今でも好きですきでたまらないんだよ」
涼野は下を向いていた。健太は続けた。
「兄ちゃん…真正面で向き合えないのは野球じゃないよ。兄ちゃんは自分と向き合えてないだけだよ!!」
「自分に…」
すると思いついたように健太はバックを取りにいった。その間に祐司は涼野に話しかけた。
「事情はわからないですけど、色んな悩みも先ずは自分との闘いだと僕は思います。お兄さんには、自分に打ち勝つ強さがありますよ。」
祐司はニッコリ笑った。健太は帰って来ると一つの写真を見せた。
「兄ちゃん…これみて。」
そこには、涼野ともう一人の男の子が肩を組んでいた。
「兄ちゃん…淳さんに約束したじゃん…「絶対にお前を越える」って…」
涼野は写真をじっと見つめていた。
しばらくして、涼野は口を開いた。
「俺は…何を迷ってたんだろうな…俺は周りに嘘をついて自分にも嘘をついてた…。健太…それから皆もありがとう。俺は野球を続けるよ」
一同の顔は笑顔になった。
「じゃあ、編入するのですね!」
耕が微笑んだ。
「いや、編入はしない!」
「え!?」
「俺が野球部を作る!」
「ど、どうして?!」
「実はね、町南中にも野球をやろうとしているものはたくさんいる。俺は町南中で野球をしたい!時間はかかるけど、俺は野球部を作ってみようと思う。」
「そっか…お兄さんがそう言うなら頑張ってください。良かったな!健太!」
祐司は健太に言った。
「うん!」
「オーイ、皆ーボール見つかった!!」
優介はこっちにむかってやって来た。
「お前、まだ探してたのか!」
一同は笑顔に包まれた。

初めてのミッション…おわり。

次回予告:「竹田先生と亀」
台詞抜粋、
「今日から、このクラスで亀を飼う。」
「耕くんって面白いね♪」
「オレ…幸せ~」
「3号諸君!我々は怪盗三人組である。君達と勝負だ!」
「亀が盗まれた…」
「僕らはいつも、アホ~」
「俺も一緒にすんな!」
「この中に、犯人がいる…」











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