なんとここが、一番好きな台詞です。(下の画像)
この一連のシーンが一番好きと言っても過言ではないかも。ということで、このシーンを徹底解説します!


「嫁给我」の場面と悩みました。どちらも欧辰の台詞ですね。この、容姿、地位、頭脳の全てを持っているような完璧で孤独な男欧辰が、たった1人惚れた女性に哀しいほど全てを捧げるさまが好きみたいです。胸が苦しくなる。





「妳明明知道只要妳求我,我什么都会答应妳的」

君が求めたら、僕は何だって応えると知っているくせに

私なりの翻訳はこうなります。


明明知道  よく分かっているくせに
只要妳求我  ただ君が求めさえすれば
什么都   何だって必ず全部

という感じのニュアンスです。中国語の方が強くて、ロマンチックなニュアンスですよね。


このシーンは、欧辰によって洛煕が映画から降板させられそうになっているとき、夏沫が「彼を降板するのはやめて」と欧辰に頼みに行く場面です。


欧辰は、洛煕を降板させた時から、夏沫が自分に会いにくることは分かっていました。むしろ、映画の降板自体、洛煕に報復することなんかよりも、彼の関心事は夏沫にありました。


頭では彼女が来るであろうと分かっていても、夏沫が洛煕のために、避けたいであろう自分にわざわざ頭を下げに会いに来るーーその現実を目の当たりにして胸がどうしようもなく痛みます。


彼女が自分に会いに来るのは、愛する男のためですからね。



欧辰は苦しみながら、夏沫を何時間も待たせるんですね。きっと心の中では、恋い焦がれる夏沫に本当は今すぐに会いたいし、待たせるなんてしたくない。でも一方で、早く諦めて帰ってほしい。あいつへの愛は、何時間も待たされてずっと待てるほどのものではないと安心させてほしい。早く諦めて帰ってくれることを期待していたんだと思います。


しかし夏沫は、会える確証もないのにずっと立ったままで、夜になり会社全体の電気が消されるまで、待ち続けるんですね。


その姿を見て、欧辰はもう辛くてしょうがない。そんなにあいつが好きなのか、と絶望するんですね。自分は彼女にそんなに待ってもらったことは勿論ない、そんなに愛されたことはない。洛煕が羨ましくてしょうがないし、自分の心の中をこんなに占めてかき乱す夏沫が、愛するが故に憎い。



それに昔の思い出をどんどん思い出す。自分がどれだけ夏沫だけを深く愛していたか、そして記憶喪失になって何も憶えていないながらも緑のレースを片時も離さず今でも夏沫のことしか頭にない自分。それから洛煕の登場に、一連の悲劇がどんどん蘇る。自分はあれだけ深く愛していたのに、夏沫に残酷に裏切られた。




欧辰は胃痛の中、やっと諦めて帰ろうとする夏沫の前に車を停めて、「乗れ」とだけ命令します。



この一連のシーンの後、救急車で運ばれて入院するレベルですから、常人なら気絶してもおかしくないくらいひどい胃痛なんでしょう。



このシーン、いいんですよね〜。夏沫は、幼い頃から欧辰の傍にいたわけですから…欧辰の体調や生活習慣、もちろん胃痛もひと目見たら直ぐに気付きます。もはや「胃が痛いの?」なんて聞く必要はないんです。欧辰は昔から不規則な食事をすると胃痛の症状が出ることをよく知っているから、夏沫は「まだご飯済ませてないの?」と聞く。ただならぬ深い関係です。
これに対して、欧辰は「君には関係ない」と突き放します。でもきっと、彼女の質問にグッとくるものがあったでしょうね。



夏沫は、薬を買いに行こうと車を停めてと頼みます。欧辰は、まさか夏沫が薬を買ってきてくれるなんて思っていませんから、行き先も告げず連れ出して、先ほど「関係ないだろ」なんて言った自分に呆れて腹を立てて、帰ってしまうのだとばかり思っています。
しかしここで強引に連れ去ったりしない。欧辰は従順な俺様キャラなんですね。この矛盾が好き。絶対的支配者なのに、夏沫にだけはいつも敵わない。夏沫が停めてと言ったら車を停めるところが素敵。なんだかんだ、夏沫に嫌われることだけはできない性分なのです。



外は大雨。傘がないと分かった夏沫が車を降りようとすると、欧辰が腕を掴んで引き留めます。ここで、夏沫も視聴者も思ったはず。欧辰は車から降ろしたくなくて強引に引き留めたんだと!



違うんですね〜〜ここがまた良い。胃痛で苦しくて動くのも辛いはずなのに、欧辰は自分が着ていたスーツの上を脱いで、夏沫に渡します。「用这个」。夏沫の方を決して見ず、腕を伸ばして「これを使え」。ここの辺、台詞がすごく短くシンプル。暗い閉鎖的な車内に2人だけ、静寂の中、最低限の短い会話。それでも、お互いを知り尽くした2人の濃い過去を感じ取ることができます。



欧辰は、どんなに夏沫がどんなに憎くても、どうしようもなく愛しているから、彼女を雨に濡らすなんてことができません。例えそれが自分から去っていくときであっても、彼女が雨に打たれるのは耐えられない。本来なら動けないような状況でも辛いだろうに、スーツを脱いで渡します。



そしたらなんと夏沫が本当に薬と牛乳を持って帰ってくる。先に薬飲んで、牛乳は熱いから気をつけてね、なんて言って。



欧辰は、こんなもんいらねぇと薬を投げ捨てます。えっ、ひどすぎ!と最初は思ったのですが…夏沫が自分を想ってやってくれているかのような優しい行為に大いに動揺したんだと思うんですね。


「昔の僕のままだと思ってるのか?昔みたいに、君がちょっと優しくすれば馬鹿みたいに言う通りになるとでも思ってるのか。もうその手は通用しないぞ」

「降りろ。もう君を見たくない。見えすいた厚意なんて見たくない。」

洛煕のために会いに来たんだろ?なんで本題切り出さないんだよ!」


こんな言葉を捲し立てます。
このシーンについて私なりの解説をします。
欧辰はこの日、心も身体もボロボロなんです。
まず、記憶が戻って、緑のレースの記憶や、洛煕がために夏沫が自分を脅した過去、洛煕に彼女を奪われた凄惨な過去を思い出す。そして、夏沫が洛煕のために会いにきて日が暮れるまで何時間も待っていたことが辛い。心がしんどいからお酒を煽って食事も食べず胃も痛い。極め付けには、夏沫が車を降りて行ってしまう。もう、最強に傷付いて、弱っている。



絶対に夏沫は戻ってこない、いつもそうだ、また夏沫が自分のもとを去った、とドン底にいるときに……なんと、夏沫が戻ってくる!しかも、欧辰のための薬と温かい牛乳まで持って、雨の中わざわざ戻ってくる。



欧辰は、心底驚いた。自分のもとを去った彼女が、自分を憎んでいる彼女が、こんなことをするわけがない。彼女はそんな女じゃない、残酷なまでに冷たい女だ。
そうか、夏沫がここにいるのも洛煕の映画降板を撤回させるためだ。今こうやって、自分に薬を飲ませようと優しくしてくれるこの行動も、全て洛煕を思っての行動だと思った。洛煕のために全てやっているんだ、決して自分のためではない、勘違いするな、と。



それでも、差し出される薬と牛乳にどうしても舞い上がり動揺する自分の心が、滑稽で、惨めで、酷く孤独であると感じたんだと思います。そして、夏沫の行動が自分に対してすごく残酷だと感じる。



以前は彼を思い通りに操っていた彼女。夏沫は昔から欧辰の心が手に取るように分かったから、欧辰のお人形でありながら、彼を手のひらで転がすことなど簡単だったんですね。そして、欧辰もそれは解っていた。愛する彼女のためならそれでも良かった。


でも今はどうだろう。彼女は、自分の彼女への愛を知りながら、彼の心をもてあそぶように優しさで彼を利用しようとする。それも、他でもない洛煕のために。いっそ、冷たく傷付けられた方がマシだったんでしょう。今はその優しさに触れて心がどうしようもなく揺れる自分が心底嫌になる。期待なんかしてはいけないのに、希望はないのに、自分が喉から欲しくても手に入れることのできない夏沫からの愛を、目の前に見てしまった感じ。そして、それは全て洛煕のため。



もう、はやく洛煕を助けてと直接言ってくれた方が何倍もいい。こんな残酷に優しさで傷付けられるくらいならと、そういう心情であったんだ思います。そんな優しさで惑わすな、生き殺しにするな、という感じですよね。



夏沫、残酷ですね。私は、ドラマを観て残酷だという印象を受けました。
この場面の夏沫は残酷だからでしょうか?表情が怖いし、怖いくらい美しい。何考えてるかわからない、という夏沫へのよくある感想にぴったり当てはまりますね。






しかし!です。原作によると、ここで夏沫は『心が痛み、何も言い返せなかった』そうです。
心が痛んでる風には見えないけど…笑



私が思うに、この場面での薬を買ってきた夏沫の行動は、洛煕のためではなく欧辰の体調を本当に気遣って、のことだと思うんですね。


確かに、ドラマだけ観た時は、彼女は欧辰のこと、結婚する前に好きだったことは一度もないとばかり思っていたの。でも小説を読んでそのイメージが変わった。


過去も、夏沫は欧辰のことが好きだった。そして今でも、傷付けたくないとか、辛い思い出をわざわざ思い出してまで苦しんでほしくないとか、欧辰に対する気持ちがいつもどこかにある。
だから、胃痛に苦しむ彼を見て、彼の身体のことだけを思って薬局に行ったんだと思います。



結果的には欧辰を残酷に傷付けることになりましたが、、、



さて、続きは別の記事に書きます!