レコードに目を転じてみると、ソヴィエト・メロディアは、西側で「ブーム」などと言われるようになる前から実に多くのレコードを出している。例えば第2番を私の手元にあるもので見ると、クレンペラー、ヴァルター、ショルティ、クーベリックなど西側の原盤によるものが多数出ている。
ソヴィエト以外の旧社会主義圏の国々を見てみると、東独エテルナにしても、チェコ・スプラフォンにしても、50年頃(つまりLPの初期)からマーラーのレコードをいろいろと出している。西側の大抵のレコード会社よりも多く出していたと言ってもいいくらいである。この時期、ドイツ・グラモフォンもテレフンケンもほとんどマーラーを出していないのと極めて対照的である。

以上の問題については、現在執筆中のマーラー論の中に詳しく書く予定だが、ともかく、コンドラシンのマーラーは、マーラーが知られていなかった(演奏されていなかった)中から出てきたものではない。ソヴィエト および旧社会主義圏ではマーラーの演奏は戦前から(いや、マーラーの時代から)自然につながっている。