ベーレンスの録音といえば、まず、1977年にザルツブルク音楽祭で一躍その名を知られることになったカラヤンの指揮による《サロメ》の、音楽祭の前後に行われたセッション録音である。ちなみにこの年のカラヤンのもう一つの目玉の曲はマーラーの第6交響曲だった。
ヒルデガルト・ベーレンスは、カラヤンにとっては初めての、そして唯一の《サロメ》に抜擢されたことで一気にメジャーになったのだったが、その後の最も重要なレパートリーはヴァーグナーであった。特にイゾルデとブリュンヒルデ。素晴らしい録音が遺されている。
ブリュンヒルデは、サヴァリッシュ指揮のバイエルン国立歌劇塲での公演の映像が歌唱、演技ともにとてもよく、ベーレンスの美しい姿が生かされているところも多いのだが、レーンホフの演出がかなり???なのが残念である。これは音声だけはCDでも出ている。1989年の収録。
時期的にはこのバイエルン国立歌劇場での公演に先立つ1987~89年に、DGがレヴァイン/メトで行った《指輪》のセッション録音が、ベーレンスのブリュンヒルデの最初の正規の録音であった。これは、直後にメトで収録されたものどは全く別の録音である。独自のよさがある。
ベーレンスのブリュンヒルデは、先に書いたように3つの正規録音を聴くことができる。どれも、「甘美で繊細なドラマティック・ソプラノ」といってもいい独特の稀有な歌唱を実現していると思う。
上記の3つの正規録音の他に、1983年のバイロイトでの録音が残されている。ここには、後の甘美さはあまりないけれども、初々しさがあって独特のよさがある。ショルティの唯一のバイロイトでの記録でもあるのだから、ぜひともどこかが正規のリリースをしてほしいものである。
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