マーラーの第1交響曲のオリジナルなLPの第1号にあたるウラニア盤の指揮者、エルネスト・ボルサムスキィについて、たいへんに示唆に富んだコメントをいただきました。
それは、レオポルト・ルートヴィヒ( Leopokd Ludwig / 1908-1979)である可能性があるのではないか、というものです。
ご指摘をいただいて、なるほどと唸ってしまいました。今までまったくこの二つの名前を結びつけることがなかったのですが、並べてみると確かに大いにあやしく思えてきてしまいました。
ということで、今回の記事は、マーラー録音史上におけるレオポルト・ルートヴィヒについての基本的な点を押さえておくことにします。
今日ではほとんど忘れられた指揮者のようになってしまっている感がある、レオポルト・ルートヴィヒにはマーラーの録音が3点だけありますが、これらはどれもマーラーの録音の歴史の上できわめて重要なものです。
1、『さすらう若人の歌』
独唱はヨーゼフ・メッテルニヒ。ベルリン放送交響楽団(片面には『亡き子を偲ぶ歌』が収録されていますが、こちらはロルフ・クライネルトの指揮)。
URANIA URLP7016(1951年7月リリース)
これは、この曲のLPオリジナルの第1号です。これ以前には二種のレコードが出されていますが(いずれも名盤だと思いますので、いずれ)どちらもSPでした。また、この時期やこれより古い時期の録音が今日何種類も聴けますがどれもCDの時代になってから初めて日の目を見た録音です。
2、交響曲第4番
独唱はアニイ・シュレム。シュターツカペレ・ドレスデン。
東独エテルナ 8 20 028
録音は1957年1月7日と10日、ドレスデン。
東ドイツでの正確な発売日時がわからないのですが、西側ではDECCA DL 9944と DGG LPM 18359が、1957年12月には出されていたようです。
このレコードは、いろいろな意味で第1号にあたります。
まず、東ドイツでのマーラーの交響曲のセッション録音第1号。シュターツカペレ・ドレスデンによるマーラーの交響曲のセッション録音第1号。
さらに、実は、意外なことに、ドイツ・グラモフォンが発売したマーラーの交響曲のLP第1号であるようです(ちなみに、ドイツ・グラモフォンがこの曲を初めて録音するのは、このルートヴィヒ盤の11年後、1968年のことになります)。
このようにさまざまな意味での記念すべき録音であるのに、なぜ「忘れ去られて」いるのでしょうか。
3、交響曲第9番
演奏はロンドン交響楽団。
正確な録音日時がはっきりしないのですが、米EVEREST SDBR 3050が1960年3月には発売されていたようです。
欧州では、ワールド・レコード・クラブSCM16-17として1961年の秋には出ています。
このレコードも、マーラーの録音史上重要な第1号にあたります。
このレコードこそが、交響曲第9番の最初のステレオ録音なのです。
(つづく)