クラシックジャーナル〈041〉マーラーを究める。 の方に詳しく書いたのですが、交響曲第1番と『巨人』とは厳密に言うならば別の曲です。


ごく簡単にこの曲の成り立ちを書いてみます。


1、1889年11月20日にブダペストで初演された「二部からなる『交響詩』」。5つの楽章でできています。


2、1893年10月27日にハンブルクで初演され、翌年6月3日ヴァイマールで再演されたもの。やはり5つの楽章でできていますが、ブタペストで初演されたものにかなり改訂を加えたものです。ハンブルクでの演奏に際して楽章ごとの、かなり詳しいプログラムと「ブルーミネ」という第2楽章のタイトル、並びに曲全体に対する「『巨人』、交響曲の形式による音詩」というタイトルが与えられました。


3、1896年3月16日、上の2つの段階にはあった第2楽章を削除し、全体的に大幅に改訂を施して『大オーケストラのための交響曲ニ長調』としてベルリンで初演されました。この時、『巨人』というタイトルも全体のプログラムも削除されました。これ以降も『巨人』というタイトルはまったく使われていません。


つまり、マーラーが、『巨人』というタイトルを付けたことがあるのは、第2段階のハンブルク稿だけだったのです。しかもその時も、他人から言われて渋々付けたというのが真相のようです。


交響曲第1番としてベルリンで初演された1896年以来、出版譜(最初のものは1899年)の表記も含めてこの曲は「交響曲第1番ニ長調」とだけ呼ばれてきました。最初に出されたレコードももちろんそのような表記になっています。

交響曲第1番の最初のLPは、1940年11月4日に録音され戦前にSPで出されものをLP化した次のものです。


ディミトリー・ミトロプーロス指揮/ミメアポリス交響楽団


アレグロ・オルディナリオ~マーラー資料館とわたしの大切なこと
米COLUMBIA ML4251(1949年12月リリース)