突然ですが、皆さんは「クローン病」という病気をご存知でしょうか?


実は私も10年ほど前まで知りませんでした。

というのも、そのころに結婚した妻が「クローン病」だったのです。


「クローン病」というのは、消化管のあらゆる部位に炎症や深い潰瘍が時に同時多発的にできる未だ完全には原因も治療法も解明されていない病気で、厚生労働省の難病指定を受けている特定疾患のひとつです。


1930年代にアメリカのブリル・クローン博士によって発見された、まだまだ歴史の浅い病気ですが、欧米では急速に患者が増えていて比較的広く知れ渡っています。


近年、日本でもクローン病患者は急増し、患者登録が始まった1976年には128名であったものが、1994年には11337名、2006年には25760人が登録しています。

しかし、この数字はあくまでも「クローン病」であると診断され、かつ、本人が申請をした数です。実際にはこの

数倍の人が潜在的なクローン病患者ではないかと思われます。

というのも、「クローン病」というのが、日本ではまだまだあまり知られてはいない病気なので診断をつけることそのものが困難であるという問題もあります。

消化器内科のお医者さんであっても「クローン病」を専門としていない場合には、診断を下すのが難しいし、他科のお医者さんであればなおさらでしょう。

一般的に最初に現れる症状は「下痢」「腹痛」「発熱」なのですが、消化管とは全く違った場所に前駆的症状が現れることも多く、診断をより困難なものにしているということもあります。

かなり多くの人が診断がつくまでに1~2年、場合によっては数年を要します。その間にかなり悪化し、早く診断がついていればしなくても済んだはずのつらい目にあうことになります。


妻は「クローン病」の専門チームがある数少ない病院のひとつである大学病院に何度も入院しているのですが、そこでもびっくりするようなことをたびたび目撃してきました。

他の病院(それもかなりの規模の、A病院とします)から緊急搬送されてきた女性。腸閉塞で緊急手術を受けることになりました。彼女は、搬送されてきた病院とは違うところ(B病院)で「盲腸」と診断を受けA病院で開腹手術をしたら、「盲腸」ではなく「クローン病」であることが判明。

A病院はクローン病に対してかなり甘い考えを抱いていたようで、たびたび狭窄を起こしていたにもかかわらず適切な処置をしてこなかった。

それで、にっちもさっちもいかなくなり大病院へ送られ、腸管の切除手術となったわけです。

これは一番望ましくない例ですが、もう少し程度は軽いけれども似たような患者に何度もお目にかかっています。


そうならないためにも、潜在的な患者さんにはなるべく早く診断がつくように専門病院に行ってほしいと強く思っているわけです。そのためにも「クローン病」をより多くの人に知って欲しいのです。


そのような思いがあって、ジョアン・ゴメス著『クローン病 増えつづける現代の難病』という書物(サイドバーに掲げてあるものです)を妻と一緒に訳しました。


好発年齢が10代後半から20代と若い人に多いというのも「クローン病」のひとつの特徴です。

小学生、中学生といった、もっと若い方で発症することも多くなっているので、教育関係の仕事に携わっていらっしゃるかたにもこのような病気があるということを知っていただきたいと思い、こちらのブログにエントリを書きました。


ちなみに別のブログのひとつ『アレグロ・エネルジコ マ・ノン・トロッポ』 は、妻の闘病ブログでもあります。とはいえ、最近はもっぱらタコ壺と化していますが・・・・・・。

クローン病を患いながらのスリリングな生活を覗いていただければ幸いです。