昨日書いた中村真一郎先生の思い出との関連から、今日は、加藤周一先生からうかがったある一言について書くことにします。
実は結果的には、この言葉が、私が加藤先生から直接お聞きすることのできた最後の言葉になってしまったのですが。
その多くの著作の端々から多分容易に想像できることだとは思うのですが、加藤周一先生は、音楽に対してもとても造詣の深い方でした。しかし、その割には、直接的に音楽について語られた文章が非常に少ないのです。
なぜ音楽について書かないのか、ということをめぐってはずいぶん以前に書いていらっしゃったので(それがどこであったかどうしても思い出せません。ご存知の方はご教示ください)、どのようなお答えが返ってくるかは十分に承知していたのですが、でも、どうしても直接お聞きしたくなってしまったのでした。
加藤周一先生のお答えは、まったく予想通りのものでした。
「同時代人に、吉田秀和がいるからです。」