秋。
いつの間にか長袖を着るようになったら、
たちまち上着とストールも要るようになった。
なのに、夕飯を食べていたらどこからか
蚊が…。
秋口になってもまだ生きのびている蚊のことを「哀れ蚊」と言う、
と、書いてあるのを読んだのは久世光彦のエッセイだったろうか。
なるほど、
仲間もいなくなった夜の肌寒い時期にゆらゆらと飛ぶ小さな蚊は哀れさが漂う。
蒸し暑い頃なら条件反射のようにバチンっと手を叩くところだが、ただフイと手で払った。
蚊、と言えば、好きな文句がひとつある。
「ボウフラが 血を飲むような 蚊になるまでは 泥水飲み飲み 浮き沈み」
こっちは確か、森繁久弥の言葉だった気がする。
味わい深い言葉だなぁ、と何度読んでも思う。
最近、仕事がつらいのでひたすら落ち込んでいるせいだろうか、やたらとしんみり心にしみる。
秋は人を敏感にするようだ。
しかも私の場合は、よくないほうに。