外はもう薄明るく
始まろうとしていた
土曜日の早朝
サリーは車で帰宅しました。
アパートの住人専用のカーポート
駐車する時に
柱に助手席側のドアが接触して
ハ! っと我に返るサリー
動揺してるのが自分で分かる。
早く部屋に入って
シャワーを浴びたい
忙しい金曜のランチとディナー
フルで働いてからの徹夜明け
でも全然眠くない
一睡も出来ずに夕方🌆
レストランへ出勤
どんな顔して寛太さんを見たら良いの?
店に入るといつもの光景
誰も何も知らない
何事も無かったように振舞う
寛太さん
シェフ①さん
『そう言えば、永住権の面接で
年内には日本行けるかも!』
シェフ②さん
『もう何年ぶりの日本ですか?』
シェフ①さん
『申請してからだし、3年ぶりかな?
すごく楽しみだよ! あれ?寛太さんは? いつ頃になるの?』
寛太さん
『いや、俺は申請中に2回も親父が倒れたり、家が無くなる一件で帰っちゃったし無効だよ。
また振り出しだね』
*80年代、アメリカ永住権取得には
サポートしてくれる企業やレストラン
から同意をもらい、移民弁護士を通じて申請するのが一般的でした。
申請してから面接の順番までは通常
2~3年かかり、その間は海外には行けません。
もし途中で帰国すると無効になり
また始めからやり直しになります。
寛太さんは申請中に
お父さんの莫大な借金発覚
持ち家は借金返済の為に売り払い
同時にお父さんは持病の糖尿病悪化で
倒れ緊急入院
等の
一大事があったらしく
長男の寛太さんは親と姉二人に
呼び戻され、永住権の申請を諦め
帰国したそうです。
シェフ①さん
『そうだったね。でもさ、早く永住権取らないと、いつまでたってもアケミさん結婚してくれないんじゃない?
不法滞在とか絶対しないタイプだよね』
寛太さん
『そうなんだよね〜本当に早く欲しいよ! 申請途中で2回も諦めたからね。
まあ、長男だし仕方ないよ。』
そんな会話を聞いてるサリー
シェフ②さん
『寛太さんのお母さんって働いてるんだよね? 』
寛太さん
『そう、今まで働いた事なんか無い
人だったけど、今は清掃の仕事してるよ。でも基本的に明るくて前向きな人だからね。』
シェフ②さん
『じゃあ寛太さんが早く結婚して
孫の顔でも見せてあげたら喜ぶんじゃない?』
寛太さん
『まあ、結婚したら安心はすると思うけど、孫は姉貴達のがいるし。
俺は子供は要らないわ。子供がいない夫婦の方が仲良いと思わない?』
シェフ①さん
『あ〜分かる気がする。寛太さんとアケミさんは子供の親になる感じがしない笑。いつまでも恋人同士って感じで良い感じだよね!』
寛太さん
『でしょう〜?子供が出来ると夫婦って言うか親になっちゃうし、やっぱり
子供がいない方がずっと仲いいって!』
シェフ②さん
『いやいや、寛太さん末っ子長男でしょう? やっぱりお姉さんの子供とはお母さんの可愛さも違うでしょ。やっぱり早くアケミさんと結婚して初内孫作って安心させないと!』
寛太さん
『アケミさんは子供欲しくないって言ってるよ。出来ないんじゃないかな?
俺も出来ない気がする。』
.......『俺、子供作れないんだ。アケミさんとも避妊は一切した事ないけど、一回も妊娠した事ないし。』
やっぱり夢じゃない
このセリフを思い出したサリー
シェフ①さん
『あ、そう言えば昨日バック・トゥ・ザ・フューチャー観たの?ごめんね、行けなくて』
シェフ②さん
『あ、俺も行けなかったんだ、誰が来たの?』
寛太さん
『俺とサリーちゃんだけだよ!
ね、サリーちゃん!』
シェフ①さん
『そうだったんだ! じゃあ今度は俺が
ビデオ借りて行くよ、何観たい?』
誰も何も疑わない
サリーと寛太さんが二人きりで
居たとして、誰が疑う?
一番あり得ない組み合わせだ
サリーは出来る限りの作り笑いをして
その日は終わった
続く