麗江のゲストハウスから撮った1枚。

世界遺産登録されただけあって街並みは素晴らしい。
クネクネ入り組む石畳の道路。
川辺に垂れる柳。
雰囲気のある商店が軒を連ねている。

しかし、ワタシは物足りなかった。
というか、この雰囲気が嘘っぱちに見えた。

昔ながらの建物を壊し、昔を模倣して新しく造り直した
テーマパークのように感じた。

当時、ゴールデンウィーク真っ只中で、
麗江は中国人観光客でごった返し、極悪な人の多さだった。
全く落ち着けなかったので、長居したくない。
早く次の街に行きたくなった。

翌朝のバスのチケットを買い、のんびり街を歩き回る。
路地が入り組んでいるので、同じ道を何度も通りつつ
方位磁石片手にグルグル歩く。

歩きつかれて、ベンチに腰を掛けジュースを飲んでいた時、
白人の女の人が大きいバックパックを背負って
ロンリープラネット片手にうなだれていた。

道に迷ってるんだなぁ、と思い
「どうしました?大丈夫?」と声をかけると、
彼女はやっぱり道に迷っていたようだ。

しばし、彼女もワタシの隣に腰掛け中国旅行の大変さを
すごい勢いで話してくる。
本当に苦労しているようだった。

ワタシは日本人で漢字が読めるので、
中国の文字を見ても、漢字の持つ意味で、
言葉の雰囲気がわかる場合がある。
しかし、漢字に馴染みがないと何もわからないのだ。

その上、地方の中国人はほとんど英語を知らない。
日本人なら「筆談」という奥の手があるが、
漢字圏以外の人は、ジェスチャーするか、
自ら中国語を憶えるしか話す手段がない。

さらに加えて、中国人店員は、結構感じがワルい。
もちろんそうじゃない人もいたが、
日本のように笑顔で「ありがとうございました!」なんて
バックパック背負った旅行で、まずそんな店には出会わない。

こう考えると、欧米人旅行者の苦労は計り知れない。

迷子の白人女性は、ドイツ人だった。
2週間の旅行で、ドイツに帰国したら結婚するらしい。
現在地を教えてあげ、少し世間話をした。

最後に、「あなたは日本人なの?」と聞かれた。

「うん、ワタシ日本人よ~」と答える。

すると「あぁ、やっぱり!親切なのはいつも日本人だ。」
と彼女は言った。

ワタシが彼女に道を教えてあげたことは、
なんてことはない当たり前の親切だ。

でも、なかなか言葉の通じない国で、一人ぼっちな上、
中国人は感じ悪い、ときたもんだ。
ワタシも経験があるが、小さな優しさでも心にしみる。

そんな中、日本人旅行者が、たいしたことはしてないだろうけど、
他の国の人と優しいコミュニケーションが取れていることを聞き、
とてもうれしく、ちょっとだけ誇らしかった。

彼女と別れゲストハウスに戻る頃はもう日が暮れており、
家の軒先のちょうちんがオレンジの光を放っていた。

ビールを買ってゲストハウスへ戻り、
3階のドミトリーへの階段を上り切った時、
ドアの前から見える景色に驚いた。
昼間、予想もしなかった、オレンジの街並みが顔を出し、
とても幻想的なのだ。
この街の最もいい時間帯は、絶対夜だ。

時間が過ぎるのを忘れて、
部屋に入らず、1時間ぐらい街を魅入っていた。