ワタシは26年間、生まれた時から引越しせず
ずーっと同じところに住んでいる。

ご近所さんは年配の方が多く、彼らも引越しせず、
みんなワタシを生まれた時から知っている人達ばかりだ。

老人が多いので、亡くなった人もいるし
ボケておかしくなり子供に引き取られていった人もいる。

朝、散歩に出かけて戻って来ないおじいちゃんを、
近所総出で大捜索した時は、子供ながらにワクワク
電話番したもんだ。

また、ボケはボケでも“色ボケ”たおじいちゃんに
「添い寝してあげようかのう~ホホホ」と言われ
何ともいえない気分の悪さに苦しめられたこともあった。

いろんな老人にかわいがられて育ったワタシなのだが、
とりわけかわいがってくれたのは、隣のおばあちゃんだ。

北尾のおばあちゃん(仮名)は、ダンナを早くに亡くし
未婚の息子と2人暮らしをしている。

お洒落なおばあちゃんで、どこかのディナーショーだか、
演劇だか、いつもどこかへ外出している。
買い物も、「コープ」ではなく「いかりスーパー」!
(この違い伝わるかなぁ?)

そして、いつも動物を飼っている。
ワタシの小さい頃は「マリー」という名の犬を飼っていた。
注射とか一切受けさせてない、チョー危険な犬だった。
蚊に刺されて死んじゃったんだっけな?

2代目は、猫だった。
ペルシャ猫をどこかから調達して来て、家の中で
大事に育てていた。
マリーとはえらい違いだった。
名前は「タオ」

そして、ペルシャ猫タオも死ぬと、
またもや、猫をどこかから調達してきた。
三毛猫っぽい雑種だ。

その猫の名前は「タオ」
また、タオだ。

その後、おばあちゃんの猫の名前はタオばっかりだ。
現在は、三毛猫タオの子供の中の一匹を飼っている。

名前は、もちろん「タオ」
もはや親も子供もどうでもいいようだ。

小さい頃、北尾のおばあちゃんの孫のあっちゃんが
ワタシを抱っこしながら階段を転げ落ちた時

「この賢い子が、アホなったらどうすんの!アホがー!!」

とあっちゃんをシバキ倒したらしい。(うちの母いわく)

そうなのだ。
なぜか北尾のおばあちゃんの中でワタシは神童だったのだ。
今となっては、ありがたくて涙が出る話だ。

そうそう、試験も受けず、適当に大学に入り、
勉強の「べ」の字もせず、挙句の果てに旅行にハマり
今は就職活動中のワタシ。

履歴書を送るべく、今日郵便局へ行ったら
偶然、北尾のおばあちゃんがやって来た。

ワタシの生活は、完全に昼夜逆転しているので
北尾のおばあちゃんには帰国後も全く会わず、
トータルで8ヶ月ばかり会っていなかった。

ワタシ「こんにちわ~、おばあちゃん久しぶりやなぁ」

オバア「・・・・・・・・・??」

ワタシ「お隣のサンダルやで、おばあちゃんっ!!」

オバア「あ~、どっかで見た顔やと思ったわ。」

ワタシ「ご無沙汰してます。」

オバア「あんた、また外国行ってたんやって?」

というような立ち話をしていた。
ワタシが「もう26なったで~」という話になった時、

オバア「ええーーーっっ!!もうそんななるんかいな!?
    あんたが小さい時から知ってるからな」

ワタシ「そうやなぁ。もう26年も経ったわ」

オバア「あんた、学生みたいやでー、
    もうちょっと顔なんとかせな!!」

顔なんとかせなって・・・
おばあちゃん、なんて語弊のある言い方なんだ。
あんたとワタシの26年間がなかったら
ぶん殴ってたでー

「化粧してお姉さんらしくしろ」って事だよな!!
と自分に言い聞かせる。

そして、それをフォローするかのように

オバア「アタシはあんたの事が好きや!
    小さい時から賢くて優しくて好きやったわ~」


心から喜べないのはなんでだろう・・・