>>①からつづく


蒼山の中腹にある「中和寺」に入ると
茹でたとうもろこしや煮卵を売るおばちゃん、
刺繍をして売り物作りに励んでいるおばあちゃん、
賭けトランプをしているおっちゃん達、
そして、まばらに観光客がいた。

こじんまりした平和の縮図のような雰囲気にホッと一息。

山の中腹にあるだけあって、そこからの眺めは圧巻だ。
大理古城の町並みと洱海全体が見渡せる。

ベンチに腰掛け、しばし下界を見下ろしとうもろこしを頬張る。
もう、この景色だけで十分うれしかった。

お寺は、まぁなんてことはない普通のお寺だ。
日本のお寺みたいな感じ。
(日本が中国のお寺みたいというべきかな?)
お線香を立てる台があり、その奥にお堂がある。
質素な雰囲気だ。

そして、お寺を越えて更に上まで行くと
左右の山に向かって山道が延びており、
続々と観光客が山道の奥へ消えてゆく。

でも、山道の先に何があるかわからないし、
その山道がどこまで続くかもわからない。

せっかく来たんだし少しぐらい行けばいい所だが、
「疲れたからいいや~」とこの期に及んで面倒くさくなり
ベンチに寝ッ転がりボーっと遠くの空を見ていた。

そこへ、ワタシを馬に乗せてつれて来てくれた
おっちゃんが通りすがった。

ワタシを見つけるなり、おもむろに冊子を取り出し、
「こんないろいろ見所があるよ、あっちから行けるよ」
と何やら言ってくれているようだ。

山道の存在は気づいている。
そして、それを確認した上でワタシはベンチを選んでいる。
その先の見所は初耳だけど、おっちゃん持参の冊子を見ても
さほど興味は湧かなかった。

でも、「あ、興味ないんで結構です」とは言えなかった。

せっかくオススメしてくれてる見所なのに、そこを否定したら、
その町で暮らし働くそのおっちゃんを寂しくさせてしまう気がした。

だから、とりあえず

「え?そうなんですか!謝謝」

と言って歩き出し、山道へは行かず適当に回り道して引き返し
ベンチに座っていた。だって、疲れてたからさ。

すると、またもやおっちゃんに見つかってしまった。

「あれ?あっちだよ~」とおっちゃん。

「本当に、謝謝です」とワタシ。

深々と礼を言い、またおっちゃんをまいて
別のベンチに座っていた。
もう偽善者この上ない。

すると、またもやおっちゃんに見つかってしまった。

(ヤベッ、またかよ)

もはや、おっちゃん、ストーカー疑惑浮上だ。
でもまぁ、敷地狭いし仕方ないか。

何やら「こっちこっち」と業を煮やしたおっちゃんが
直々に山道まで案内してくれる模様。
お礼を言って、適当にまこうと思っていたが、
おっちゃんが山道の先の観光案内もしてくれるようで
もう山道へ行くしかなくなった。


・・・・・・・・・

「謝謝」





>>③へつづく