ワタシの泊まっているドミにスロヴァキア人の
ボバン(男・推定30)がいる。

彼は、親日家で日本人のワタシを見かけると
呼び止めて、いろいろ話しかけてくる。

「日本語でフィッシュはなんて言うんだ?」

「中国より日本の武術の方がいい。
 中国の武術はブルース・リーと共に死んだ。」

「オレは、ディスコに行かない日はない。」

「日本語で、アーティストはなんて言うんだ?」

「中国音楽は嫌いだ。」

極めつけは
「中国は、ファッキン ダーティー!」

やたら中国を批判し、日本を褒めてくれる。

日本を褒めてくれるのはうれしいんだけど、
じゃあ、なんであんたは中国来たんだ!?って
このワタシが思うほど、中国が大嫌いなご様子。

結構、かっこつけた話し方や仕草をする人で、
「なんだこいつは?」と、思うこともしばしば・・・

でも、そんなかっこつけボバンとの出会いは
1週間前にさかのぼる。

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その時、ワタシは、
ドミには自分ひとりだと思い込んでいた。
洗面所で水筒を洗っていたら、
横のトイレから水の音が聞こえる・・・

(流れっぱなしになってるのかな?)

と思い、ドアを開けようと押してみる。
でも、少ししか開かない。

(ん?何か引っかかってるのかな?)

と思い、さらに強くドアを押すと、
それと同時に、トイレの中からいきなり
鼻歌が流れ始めた。

(ヤバイ!誰か入ってる!!)

「うわー!ア、アイム ソーリー」と言うも
返答はなく、ただ鼻歌が流れる。

結局、最後まで鼻歌は止まず、
ハニカミながら、出てきた人がボバンだった。

こっちをチラ見している。
トイレの事には触れず、思い切って話しかけた。

「コンチワ。サンダルです。日本人です。」

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こんな出会いだったので、かっこつけても
ワタシには通じない。

それに、この間、
ワタシが相変わらず「三国志」を読んでいると、
ボバンが1冊の雑誌をポンと机に置いた。

「なにこれ?」ワタシ。
「買ったんだ。」ボバン。

それは、オール中国語の雑誌で、ネコ特集だった。
こんな時期だけど、サンタの格好したネコとか、
ネコのドアップとか、とにかくネコだらけ。

なんかこの人、憎めないんだよね。