13日の5時、バンコクに着いた。
バラナシで会ったミヨさん(仮名・29)と一緒だ。
そこから安宿街カオサンへバスで向かう。
1時間ぐらいの場所なのにも関わらず、
ソンクランの影響で3時間経っても着かない。

ソンクランとは、タイのお正月で
水を掛け合い、粘土っぽい泥を顔に塗りあう。
小学生の夏の遊びみたいなこの祭が
タイ人たちの最もエキサイトする祭らしい。

カオサンに着いた時、
人がギューギューに通りにひしめき合い
水を掛けたり、泥を塗ったりしながら前進している。

ワタシとミヨさんはとりあえずゲストハウスへ向かうも
人が多すぎて、たどり着けない。

イライラは頂点に達していた。
インドから来たということもあってか
ワタシはめちゃめちゃ攻撃的になっていた。
大きなバックパックを背負い、人ごみの中を移動するのは
至難の業で、しかも水までかけてきやがる。
泥を顔に塗られた日には、追いかけてでも殴りに行った。

今思えば「しばく・・・しばく・・・」とつぶやきながら
歩いていたように思う。

そんな時!!!

2人組の日本人が「大丈夫??」と声を掛けてくれ、
なんとそれぞれがワタシたちひとりずつに付いて
移動してくれるというのだ。

「レックさんラーメンで待ち合わせで!!」

こうして、ワタシとミヨさんは散らばり、
ワタシの相方は奇特な日本人男性となった。

その時、ワタシは疲れ切っていた。
だから何も考えずに、

「手をつないでくれますか?」

って言ったのだ!!
シラフだったら絶対言えない。
初対面の人に、こんな甘ったれたことを言ったのは、
人生初かもしれない。
親切な日本人に守られながらも、
泥をつけられると怒りまくりで、人ごみを抜けた。

「そんなに攻撃的になっちゃダメだよ。」
と、親切な日本人に言われた。

「もう、疲れすぎてダメなんだよ。
しかもインドで攻撃的になっちゃったんだ。」
と、適当に流した。

「レックさんラーメン」にはミヨさんが
すでに到着しており、ぐったりしていた。
お礼を言い、そこで優しい2人組とお別れした。

なんとか宿が取れてシャワーを浴び、
一息ついたところで、
「そんなに攻撃的になっちゃダメだよ。」
と言われたことを考える。

本当にその通りだ。
お祭りなのに、怒っちゃダメなんだ。
怒るなら、そんな時期にタイに来るなって話だ。
ワタシが間違っていた。
ごめんよ、殴ったタイ人たち・・・

さらに、助けてくれた日本人を考える。
「手をつないでくれますか?」って
よく言えたと、自分に驚く。
手をつないで、守られながら人ごみを抜けたあの時間は
今思うと、すごく不思議な時間だった。

緊張もドキドキも何もなく、
ただ疲れてイライラしてたから、
もっと状況を楽しめばよかった、と
おばちゃん的後悔が残る。