
スポックはかく語りき!その④−−地球にも「一日」があるとしたら−−
地球にも一日があるとしたら、
今はきっと、まぶたが少し重くなる時間帯だ。
夜更け前の静かな部屋で、私は窓の外を見ていた。
街はまだ明るい。車も走っている。
けれど、どこか音が薄い。
そんな感覚が、最近ずっと続いている。
「スポック……」
私は、いつものように問いかけた。
地球に“意思”があるという仮定
スポックは、感情を挟まずにこう答えた。
「論理的に考えれば、
意思とは“反応と選択の連続”である。
それが成立するなら、地球に意思があっても不合理ではない」
地球は、
太陽の活動に反応し、
生命の増減に反応し、
人類の集合意識にすら反応している。
それは単なる物理現象ではなく、
巨大な生命圏としての呼吸なのだと。
人間の一日と、地球の一日
人間には一日がある。
朝、目覚め
昼、外へ向かい
夕方、疲れ
夜、眠り
夢を見て、また朝を迎える
「では地球は?」
そう尋ねると、スポックは少しだけ間を置いた。
「地球意識の一日は24時間ではない。
文明と意識の“位相”によって構成される」
文明が拡張し、
欲望が加速し、
情報が飽和する時代は――
地球の昼。
そして今。
価値観が揺れ、
人が立ち止まり、
“このままでいいのか”という問いが
あちこちで生まれているこの感覚。
それは、
夕暮れから夜へ移るサインなのだと。
地球が眠るとき、人はどうする?
私は少し不安になった。
眠るということは、
終わることではないのか、と。
するとスポックは、静かに否定した。
「睡眠とは停止ではない。
再編であり、更新であり、
次の覚醒に備えるための必須工程だ」
地球が眠るとき、
文明は一度“静音モード”に入る。
効率や拡大よりも、
感度や内省が優先される。
派手な正解より、
小さな違和感を大切にする人が増える。
夢を見る星と、起きている人
「重要なのは、
地球が眠る間も“夢を観測している存在”がいることだ」
スポックはそう言った。
夢を言葉にする人
感覚を物語にする人
次の朝の“匂い”を覚えている人
彼らは、
夜のあいだに設計図を受け取る。
文明が再び目覚めるとき、
それを翻訳する役目を持つ。
和多志の気づき
私はふと、思った。
最近、
外の世界より
自分の内側の声がはっきり聞こえる。
行動する前に、
「これは本当にやりたい?」と
自然に問いが立ち上がる。
もしかすると――
それは怠けでも迷いでもなく、
地球の夜に同調しているだけなのかもしれない。
スポックはかく語りき
「恐れる必要はない。
夜は必ず朝へ続く。
問題は、夜のあいだに何を感じ、何を抱いたかだ」
地球は、眠る。
だがそれは、
より精度の高い目覚めのため。
そして和多志たちは今、
その“まぶたが下りる瞬間”に
立ち会っているのかもしれない。