突然の
母の匂いに
顔上げるエスカレーターしかないから当然のように乗る。
風が動くのではなく、人が動いて風がおこる。
その風が、さまざまな“匂い”を運んでくる。
20年以上も前に逝った母の匂いに出会った気がした。
おそらくは前のステップに立つ老婦人だとは思うのだが
顔を近づけて急に振り返られでもしたら大ごとだ。
化粧品か、洋服か、体臭・加齢臭なのかは知らんけど不快ではない。
想っていたら母のカレー、カツ丼、煮しめの味が香りと共によみがえってきた。
なんで食べもんばっかりや!?
私は今年60歳、旅立った母と同じ年齢になる。