そうかもしれない

 

以前「美人だな」と思った女優さんが政治家になってから段々とその美しさを失っていった。それも一人だけではない。

 

幼い時、写真屋の父とよくお散歩に出かけた。途中では通りすがりにきれいな女の人を見ると、父の目は輝いているように見えた。ときには振り返ってその女の人を見ることもあった。

そんな父は私に「落ち込んだとき、どうしょうもないときは、きれいな人を見なさい」と言った。

私は「どうして?」と尋ねた。

「なんでもいいから、そうしなさい。今にわかるから・・・」というのが父の返事だった。

 

最近になって、父の言っていることの意味が分かるようになった。

通勤の途中では、すれ違う人たちの中から、きれいな人を見つけるようになった。たまにそんな人たちと目がうこともあった。そんな中「一瞬、ドキっとするような気持にさせる女の人」にも遭遇した。

 

その人と目が会った瞬間、とてもピュアな気持ちが伝わってきたことがあった。それは一瞬をとらえた写真と同じもののように思える。そして私の気持ちが落ち着いて、少し晴れ晴れとした感じになっていることに気づいた。

 

最近、新しいマンションを購入する契約をした。転居は再来年となるが現在の住居には30年以上も住んでいる。環境がよく交通にも便利なことからとても気に入っている。そして音楽家のマーラーのことを思い出した。母親はマーラーのために何度かの転居をしたことが書かれていた。家も人の顔を作り、人そのものを作るのかもしれない。

 

つまり、大事なことに気付くことが人生を豊かにするのではと思うようになった。歳をとるといろいろなことが見えてくる。そんなことを若い人たちに伝えたいと思うことも多いが、それは自分で掴み取ることが求められているように思う。

 

 

それを可能にするものに努力と感謝と愛情があることを教えもらったことがある。

 

人との出会いは、あなたの人生にとって不可欠なものなのかもしれない。