最近、会社の近くお店でサボテンを買った。
これまで何度かサボテンは育てたものの、手入れを怠って枯れてしまったことが何度かあった。
そのため、サボテンのない時代が数年続いた。
その花屋さんの前を通ったとき、微かな声が聞こえた。
「買ってー」って子供みたいな声だった。
私は驚いてまじまじサボテンを見つめた。
確かに言ったよなー・・・「買ってー」って
そうこうしているうちに、お店の中から店員さんが出てきた。
「そのサボテン、最近入ったんですよ。これまで何人かのお客さんが買おうかなと考えていたんですが、お客さんが確か3人目です・・・」
「大きい声では言えないんだけど・・・買ってーっと聞こえたんよ」
「このサボテンがですか?」と店員さんは怪訝そうな顔から、笑いそうな顔になった。
「それって、さっきお店の前を通ったお母さんと男の子が買ってーって言ってましたよ・・」
「えーっ、そうでしたか」
そういえば、さっき男の子とお母さんが話ながらすれ違ったことを思い出した。
私はてっきり、サボテンが「買ってー」って呟いていると思った。
「買います。せっかく声をかけてもらったのですから、何かの縁です」
「そうですか、ありがとうございます。・・・育て方を中の方で教えます」
と言って私と店員さんはお店の中に入った。
「要は、余り手をかけ過ぎない事がコツです。とはいってもほったらかしはだめですよ」
店員さんはサボテンを包装し始めた。
「水は、一週間に一度ぐらいでいいです。・・本当は日の当たる場所がいいんですが、会社の中だと、そういえ訳にもいきませんよね・・・」
店員さんは何故かニコニコしていた。
サボテンの近くに小さな表札みたいなものがあった。
「あっ、お客さん、その表札にも手入れの仕方が書いています。参考にしてくださいね」
店員さんは、結構大事に包んでくれた。最後にポリ袋に入れて
「ありがとうございました。もほったらかしはだめですよ。一週間に一度ぐらいは水を少しだけやってくださいね・・・少しですよ・・」
「ありがとう、そうします」
親切な店員さんだった。なんだか気持ちまで豊かになった気分でした。