数年前の初秋の頃のことでした。

金曜日の夕刻、私は銀座の四丁目付近を歩いていました。交差点で立ち止まっていたところ、女の人が近づいてきたのです。「すみません。てんごくにはどのように行ったらいいのですか?」

私は思わず、女の人の顔を見てしまいました。

「あのー、てんぷらのてんごくです」やっとその女の人の目的を知ることが出来ました。

「てんぷらのてんくにさんですね。近くですよ・・・・」私はここからの道順を伝えました。

「てんくにと言うんですね。・・・・失礼しました。・・・」

 

 

女の人は「わかりました・・・」というような雰囲気で会釈をしてくれました。

髪の毛の少し長い檀れいさんに似たきれいな人でした。

 

友人のディビッドは日本に来ていた時のことです。ビールの宣伝のテレビを見た時、「この人が私の理想の人だ・・・」と突然に叫び出したのです。「こう、この人誰ですか?」と慌てた様子で聞くのです。「檀れいさんです。日本的な美人でしょう・・・・」「うーん、益々気に入りました。・・・」

 

「デイビッドには本国にきれいな奥さんがいるだろう・・・」と聞くと、「それはそれ、これはこれ・・・・奥さんと理想の人は別問題です・・・」とデイビッドは真剣な顔で言うのです。私は「えっ、そうなの・・・・・」私が笑うと、仕方なくデイビッドも笑いました。

 

「こう、世の中には居るのですね・・・理想の人。私は自国の女の人のことしか考えていませんでした。でも理想の人は世界中にいるのですね。・・・でも、私の理想の人はあの人、檀・・なっといったっけ・・・」「檀、れいさんです。・・・」と私は真面目に答えた。

 

夕刻前のミーティングの休憩時間にも、「こう、檀れいさんに会うにはどうしたらいい?」と聞くのです。「えっ、彼女に会いたいの?・・・日本人でも彼女に会うのは難しいよ。・・」

「彼女ってそんなに有名な人?・・・」「名の知れた女優さんだからね・・・・難しいと思うよ」デイビッドは諦められない様子でした。

 

「デイビッド、彼女に会いたいのなら、そのお腹、なんとかしなければ・・・」と言うと、「分かってるよ、今日から減量することにする・・・」と言って、夕食は普通の時は半分しか食べませんでした。

 

そう云えば、檀れいさんが好きだというカナダ人の英語の先生が居たことを思い出しました。

彼は、ビールの季節になると彼女が宣伝に出ることを知っています。以前は録画テープに保存して毎日のように見ていると話していました。最近はスマホで見ていると友人から聞きました。

 

私には意外な異国の知人達の気持ちでした。

 

 

「意外な質問」それはある日突然のようにやってきます。

 

私は街を歩いている時、知らない人からよく声をかけられます。勿論「道案内」がほとんどです。でも中には、意外な質問もありました。

 

新宿御苑の近くだったと思います。初夏の午後の4時頃だったと思います。姉妹で歩いていたのですが、背の高いお姉さんの方が私に近づいてきた「あのー、この辺でお花が沢山あるところはありますか・・」と言うのです。私は咄嗟のことで直ぐには返事できませんでした。

「そうですね、もしかしたら、新宿御苑の中に入ると見れるのでは・・・・」と言いました。

 

「そうですか、ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をしてくれました。少し遠くの方で「おねーちゃん、お水買っていい・・・」と妹の方が言ってました。

 

私はしばらく歩いてから後ろの方に振り返りました。でもさっきの女の子達が居ないのです。

忽然と消えてしまったように感じました。大木戸門の方に歩いて行ったと思っていたのですが、見当たらないのです。私は変だとは思ったものの、それ以上に気にすることはありませんでした。

 

小学生の時だったようです。多分1年生の頃だと思う。

「こう、この前、お花とお話していたでしょう。お姉さんはちゃんと見てたのよ。・・・何話していたの?・・・」

その頃、私はよく道端のお花から話しかけられたことがあったのです。

「こう、何しているの?」

「これから、家に帰るの・・・」

「遊んでいかない・・・」

「どこで・・・ここで?・・・」

お花がこっくりと頭を下げるのです。

「でも、もう帰らないと・・・」

「そうなの、じゃーまたね・・・・ばいばい」


私は怖かったのか、走って家に帰りました。

私はお花と話したことは誰にも言いませんでした。でも近所のお姉さんがちゃんと見てたのです。私を可愛がってくれたお姉さんはしばらくして亡くなりました。不思議な気持ちでした。

 

大人になると、こんな不思議な体験はなくなりました。大学生の頃まではそんなことはあったように思います。そう云えば古物屋の親爺さんがある時、「こう、しっかりせんと魂を持っていかれるぞ・・・目を覚ませ・・」と怒鳴られたことがありました。


気づいた頃には、親爺さんは笑顔になっていました。でも言っていた時はとても怖い表情でした。この時以来、不思議な出来事はなくなってしまいました。

 

「思いがけない質問」

それは、何時あなたにやってくるのか分かりません。