通勤の朝
地下鉄の駅を降りて改札口までの長い通路で
たまに出会う老夫婦
2人とも黒髪をたくさんの白髪が隠している




奥さんが旦那さんの歩行を助けているのか
旦那さんが奥さんの歩行を助けているのか
いつも寄り添い歩く後姿を目で追ってしまう





左側が奥さん、右側が旦那さん

それが2人の定位置







改札口を出ると切符売場へと向かい
夫婦で仲良く路線図を見て話したり




ある日は出口へと向かう通路をゆっくりと
寄り添いながら歩いていく





久しぶりに見た今日は旦那さんひとりだった
いつも横に寄り添っている奥さんがいない




どうしたのかな?用事があったのかな?
それとも………




悪い想像が頭を横切った

でもすぐに打ち消した




たったそれだけの出来事だった




その小さなとも言える出来事にさえ
人それぞれの貴重な人生があるんだ
ある人には取るに足らないことでも



そんなことを思った朝だった





1ヶ月近くが過ぎた頃だった

いつものように駅に着いた電車から降り

改札口へと向かう通路





旦那さんと寄り添いながら

歩く奥さんがいた

黒髪を隠していた白髪がもう

黒髪が見えないほど白く変わっていた





左側が奥さん、右側が旦那さん

定位置は変わっていない





良かったと安堵した

いつもと変わらない仲良しな2人の姿に

朝から嬉しくなった





良いな…と思った

私もあんな風に年を取りたいと

今まで思ったことのない事を思った





お金ではどうしたっても手に入らないものを

あの老夫婦はちゃんと手に入れてる

会話があってもなくても

互いを想い合う気持ちはそのまま変わらずにある






結婚式の「誓いの言葉」そのものを

老夫婦は見せてくれてる




〜健やかなる時も 病める時も 

 喜びの時も 悲しみの時も 

 富める時も 貧しい時も 

 これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合い 

 その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?〜






それを静かに教えてくれてる

あの老夫婦が大好き

ずっとずっとずっと離れずにいてほしい












ルンルン♪