ピカピカの一年生
の姿がほほえましい季節になりました
その新一年生には教師の家庭訪問や保護者の授業参観などの学校行事体験が待っています。
その授業参観がきっかけで、自分の子どもたちが小学生だったころの私は、
近所の子どもたちの間ではちょっとした有名人になりました。
年子で生まれた長男と二男が、2年生と1年生の時でした。
ふたりの授業参観が同じ日の同じ時間に行われました。
私は決まりに従いそれぞれの教室の後ろのドアから入り、背後から授業の様子を見学しました。
そして公平を期すために離れている二つの教室を時間を見計らっては何度か行き来しました。
これが裏目に出て、子どもたちがこっそり後ろを振り返って私を探しても、いつも私はそこにいないという事態が重なりました。
その結果、「ママは来てくれなかった」事になってしまいました。
次の授業参観日がやってきました。
私は一計を案じて、教室に入る前に廊下側の一番前の窓ガラスの横で、わが子が気づくまで「来たよ。来たよ」のピースサインをすることにしました。
このピースサインに気づくのがわが子だけであるはずがありません。
教室にくすくす笑いが起こりました。
末っ子が一年生になると、私は三つの教室を行き来しながら、
“来たよ、来たよ”のサインを送りました。
子どもたちの反応は三者三様で、
長男は私に手を振り返し、
二男は知らん顔を決め込み、
長女は、恥ずかしそうです。
それでもあとで「どうして来てくれなかったの?」泣かれては困るので、私はこの行動をやめるわけにはいきません。
かくして参観日が近づくたびに、外ではよその子に
「参観日きてね」
と声をかけられ、家では子どもたちに
「ママ、行儀良くしてね。ピースをしたらダメだよ。」
と、諭されるようになりました。
私はつかの間の親子逆転の日々を心ひそかに楽しんだものでした。