先日見た映画です。
「ドストエフスキーと愛に生きる」
翻訳家スヴェトラーナ・ガイヤーの半生を描くドキュメンタリーです。
1923年にウクライナに生まれ、母親に勧められドイツ語を勉強した彼女。父親はスターリン粛清の犠牲となり、祖国ウクライナは独ソ戦の激戦地となりました。
ナチス政権下、友人や身近な人々が次々と命を失うなか、彼女は通訳として激動の時代を生き延びます。そして、ドイツ人の尽力で奨学金を得て、祖国を離れてドイツへ。
それ以降、彼女はロシア文学の翻訳をしながら、ドイツで生涯を送ることになります。
映画では、翻訳に従事する彼女の様子や、日々の暮らしを丁寧に営む姿が、静かに映し出されていきます。
翻訳に対する思いも、直接彼女の口から語られます。
作品中彼女が発した言葉のなかで、他と異彩を放っていたのは、次のフレーズでした。
「私には負い目がある」
「どうして休まないのですか?」 というインタビュアーの問いに対する彼女の答えです。
「私には負い目がある」
彼女の血の色が見えた気がしました。